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 障害者スポーツの魅力を伝える番組や雑誌が相次いで作られている。「かわいそうというイメージを変えたい」「価値観を覆したい」。取材にあたったプロデューサーや記者に狙いを聞いた。

 有料放送のWOWOWは、パラリンピックのメダリストたちを追ったドキュメンタリー番組「WHO I AM」を2016年から放送している。国際パラリンピック委員会と共同で企画し、20年の東京大会まで続く。5年にわたるシリーズは「これまでにない大型企画」とプロジェクトリーダーの口垣内(くちごうち)徹(てつ)さんは話す。

 1年目に取り上げた選手は世界7カ国の8人。2年目も7カ国8人のメダリストが登場。半年から1年かけて取材し、年ごとの取材班の移動距離は地球10周分を超えた。

 取材や編集を担当したチーフプロデューサーの太田慎也さん(39)は当初、障害を持つ選手にどう接するべきか、戸惑ったという。「手首から先がない選手に握手を求めていいのか、車いすの選手と話す時はしゃがむべきなのか、いちいち考え込んでしまう。障害者との向き合い方を知らない私たちの意識こそが社会の障害で、それを問い直す必要があると思った」

 一方、選手たちは明るくて自然体だった。世界大会はプロ野球やJリーグの試合のような盛り上がりで、わくわくした。「知れば知るほど、イチローやテニスのフェデラーを応援するのと同じ感覚になった」と太田さん。「かわいそうな人が頑張っている話じゃなく、人生を楽しんでいる姿をそのまま伝えたい」

 タイトルの「WHO I AM」は、「これが私」という意味で選手たちがよく口にしていたフレーズだった。

 評判は上々だったが、視聴者の数は「残念な数字」にとどまった。「放送はゴールじゃなくてスタート」。PRイベントや無料動画を通して関心を高め、見る人の価値観を変えたい。そこが目指す先だと言う。

 「実業之日本社」が昨夏に発刊した雑誌「パラスポーツマガジン」は、障害者のライフスタイルを発信している点が特徴だ。スポーツを入り口に、インフラの進化や多様な生き方を知ってもらうことを狙う。

 第1号では、車いすバスケットや車いすカーリングを躍動的な写真で紹介。ゴルフやハンドバイクなども取り上げ、今後は障害者と健常者がチームメートとしてプレーする競技も掲載していくという。

 取材、執筆を手がける編集本部長の芦沢泰仁さん(52)が心がけたのは、タブーを設けないこと。

 かつて、障害者をありのまま描くことには「偏見を助長する」と批判の目が向けられた。だが今は違う。「障害を持つ人の発信力も旺盛だし、読み手も飾らない姿を求めている」。インスタグラムを活用し、海外の障害者のライフスタイルも紹介している。「いかに暮らしやすい社会を作れるか。障害者が見えにくい現状を変えることが一つの手がかりになるはず」

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 WOWOWのドキュメンタリー「WHO I AM」は今年、2月に3番組を放送する。4日にハワイ在住の義足スノーボーダー、エバン・ストロング、11日にスロバキアのアルペンスキーヤー、ヘンリエッタ・ファルカショバ、18日に平昌パラリンピックで活躍が期待されるアルペンスキーの日本エース、森井大輝が登場する。4日のみ無料。

 実業之日本社の雑誌「パラスポーツマガジン」は約80ページで税抜き1千円。年2回の発行で、第1号は昨年7月、第2号は昨年11月に発売された。発行部数は5万部。(西村奈緒美)