【動画】匠に教わり、栃餅作りに挑戦=福野聡子撮影
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 京都市最北端にある久多(くた)。中心部から車で約1時間、山々に囲まれた約90人の小さな集落です。山の恵みを生かして昔から作られてきたのが「栃餅(とちもち)」。トチノキの実を入れたお餅で、ほろ苦く、ぜんざいにぴったり。でも、手間ひまがかかり、実のアク抜きなどに微妙なコツが必要です。とはいえ、久多に住んだからには作りたくて、地元の方々に教わり、この2年、栃餅作りに挑戦してきました。さて、出来栄えは。

なぞの「呪文」とともに

 「赤栃、赤栃、ええ栃になりますように。赤栃、赤栃……」。低い声でつぶやくのは、栃餅作りの匠(たくみ)、辻禮(みち)子さん(86)。おけの中に栃の実、灰、お湯を入れ、木の棒でぐるぐるとかきまぜます。栃餅作りに欠かせない工程「灰合わせ」です。一見、栗まんじゅうのような栃の実ですが、タンニンやサポニンなどの成分が含まれ、アク抜きをしないと食べられません。

 辻さんは久多生まれ。栃餅は65年ほど前、お嫁にきた当時から作っているといいます。おしゅうとさんが栃餅好きで、作ってみたら「上手やとほめられてうれしくてなあ」。栃餅加工で京都府の「農の匠」に認定。92歳になるという夫の光男さんもお餅作りを手伝い、大原地区の「里の駅大原」などから注文を受けています。山里ならではの特産品は若い人にも人気です。

 久多に来て初めて栃餅を食べた私ですが、独特の香ばしさと風味にすっかりやみつきに。ご近所からもいただきますが、いつまでも甘えてはいられない! 一昨年冬から、辻さん宅に度々伺い、栃餅作りを学ばせていただいています。

 栃餅作り=栃の実の処理・アク抜きといっても過言ではありません。①拾った後、すぐ実を水に浸す(虫を殺す)②カラカラに乾かして保存がきくようにする③1週間ほど流水に浸す④「栃へし」という木製の道具で固い皮をむく⑤1週間ほど流水に浸す⑥アク抜きのため「灰合わせ」をする⑦2日ほどおいて、水で灰を洗い流す……。各工程にも細かいコツがあり、気が遠くなりそうです。

 特に「灰合わせ」は、経験を積んだ辻さんでも「なかなかアクが抜けんことがある」難しい作業。栃の実をおけに入れてお湯を注いで温めておき(そのお湯は捨てる)、広葉樹の灰(杉など針葉樹はダメ)、お湯を入れ、「ふくらし」と呼ばれる木の棒で時計回りにかきまぜます。

 その際、唱えるのが、「赤栃……」の願いごと。久多では、赤みを帯びた栃餅を「赤栃」といって尊び、色の薄い栃餅を「白栃」と少し残念がり、競うようにして作ってきたそうです。

■頭の上に落ちて…

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