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 スーパーで、できたての料理を出す「グローサラント」が広がっている。英語のグローサリー(食料品店)とレストランを組み合わせた米国発のスタイルだ。食材を売り場と共通化して仕入れのコストを抑えつつ、弁当や総菜とはひと味違った料理を出すイートインの「進化版」で、働く人や単身世帯のニーズの取り込みを狙う。

 総合スーパー大手のイオンリテールが昨年7月に開業させた商業施設「イオンスタイルumie」(神戸市中央区)。1月下旬のお昼どき、地下1階の食料品売り場の隣の約260席の飲食スペースは、買い物途中の女性客や会社員たちで、ほぼ埋まっていた。

 一見、普通のフードコートやイートインだが、人気のメニューは精肉売り場で販売する自主企画商品「トップバリュ」の豪州牛を使ったステーキ。150グラムを目の前で焼いてくれるサーロインステーキは、お昼どきならスープにサラダ、ライス付きで税抜き1580円。会社員の男性(43)は「ほかの店だと、あと数百円は高い」と満足顔だ。

 パスタやサラダも食べられる。いずれも食材の多くは食料品売り場でも販売しているもの。仕入れの費用を抑えられるため、テナント型のフードコートより高い利益率を実現できるという。

 狙うのは、働く女性や単身世帯の増加で高まる「中食(なかしょく)」ニーズだ。日本惣菜協会によると、スーパーやコンビニの弁当や総菜といった中食市場は2017年に初めて10兆円を超える見通しだ。コンビニエンスストアも、買った商品をすぐに食べられる「イートイン」スペース併設店を増やして利用者の利便性を高めるなど、「中食」をめぐる小売り大手の視線は熱い。

 高級スーパーの成城石井も、昨年9月に開店した「トリエ京王調布店」(東京都調布市)にグローサラントを併設した。食べてみて気に入った食材や調味料があれば、成城石井で購入できる。

 食料品をネット通販で買う人も増える中、生き残りをかけて若手社員がアイデアを出した。昨年6月に若手の7人を米国に派遣。高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」などを訪れ、本場のグローサラントを見学した。「スーパーにある食材を使った『コト消費』で消費増につなげたい。ネット通販にはない旬の食材や鮮度も売りになる」(広報)。

 食材の仕入れを売り場と完全に共通化して原価を抑える一方、メニューのレシピカードを店内に置いて併設の食料品売り場で同じ食材を買いやすい工夫も凝らした。今後、より小型の店舗でもグローサラントを導入できないか検討する。

 関東でスーパーを展開するヤオコーは、埼玉県川越市内の店舗を昨年3月に改装し、注文を受けてからつくる丼物やサンドイッチを提供するグローサラントを導入した。「食材を買って調理する人が減る中で、新たな市場の開拓につなげたい」(広報)という。

 セブン&アイ・ホールディングスも、傘下のヨークマートやイトーヨーカ堂での本格展開を急ぐ。井阪隆一社長は「日本には米国のようなグローサラント型スーパーが少ない。日本のスーパーができていないことに挑戦したい」と話す。(筒井竜平、牛尾梓