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教えて!憲法 基本のき:5

 日本国憲法でもっとも重要だといわれている理念が三つある。

 国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義。あわせて「三つの基本原理」と呼ばれている。明治憲法のもとでは天皇が国の主人公(主権者)だったが、国民が自ら主人公となり、一人ひとりの人権保障を大幅に強めた。そして、国内外に多くの犠牲者を出したことへの反省から、戦争の放棄をうたった。

 国民主権とはどういうことか。ひとことで言えば、国のしくみをさだめた憲法を制定したり、改正したりする権力が、天皇にではなく国民にあるということだ。

 憲法が施行された1947年に旧文部省がつくった教科書「あたらしい憲法のはなし」が、おおよそ次のように説明している。

 「これまでの憲法は明治天皇がおつくりになって、国民にあたえられたものです。しかし、あたらしい憲法は日本国民がじぶんでつくったもので、日本国民全体の意見で、自由につくられたものであります」

 憲法の英語の草案は、戦後、日本を占領していた連合国軍総司令部(GHQ)がつくったものだ。だが、日本で初めて女性の参加が認められた46年4月の衆院選で選ばれた議員によって審議されたことから、この教科書は「あたらしい憲法は、国民ぜんたいでつくったということになるのです」と説明する。

 いまの憲法では、選挙によって国民を代表する国会がつくった憲法改正案を最終的に認めるかどうかは、国民が直接の投票によってきめる。

 この国民投票こそ、国民が主権を行使する最も重要で、具体的な場面だ。

 それでは、主権者である国民が持つ「基本的人権」にはどんなものがあるのだろうか。大きく三つに分けられるが、キーワードは「自由」だ。

 まずは文字通りの自由権。奴隷のように拘束されない身体の自由、思想や良心の自由、そして表現の自由など、国から個人への介入を排除することから「国家からの自由」とも呼ばれる。

 これとは逆に「国家による自由」と呼ばれるのが社会権だ。すべての人が人間らしい暮らしができるよう、国家に配慮をもとめることができる権利だ。社会保険や生活保護などおたがいが支え合っていく社会保障制度のもとになる考えだ。ほかに裁判を受ける権利なども国家による自由に含まれる。

 そして国政や地方自治に参加する参政権。これは「国家への自由」とも言われている。

 憲法はこうした自由のほか、平等権などもさだめている。

 基本的人権は、民主主義による多数決によっても人から奪うことはできない。ただ、だからといって、何をしてもいいというわけではない。

 たとえば、表現の自由があるといって人の名誉を傷つけることを言ってはいけないことなどを考えれば、当然のことだ。(編集委員・国分高史)

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 〈あたらしい憲法のはなし〉 1947年5月3日の日本国憲法施行を受け、旧文部省が中学1年生用に発行した。憲法のなりたちや民主主義、戦争放棄などを挿絵とともにやさしい言葉で解説している。

 戦争の放棄の項では、軍艦や戦闘機を溶かす炉から船や電車、消防車などが再生されていく挿絵がよく知られている。

 基本的人権については「じぶんの思うことをいい、じぶんのすきな教えにしたがってゆける」「国の力でこの自由を取りあげ、やたらに刑罰を加えたりしてはなりません」などと説明している。

 岩波現代文庫などで復刻されているほか、ネット上でも全文が公開されている。

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 〈1946年の衆院選〉 戦前は女性の参政権は認められていなかった。敗戦後の45年12月、連合国軍総司令部(GHQ)の指令により衆院議員選挙法が改正され、女性の国政参加が初めてみとめられた。

 これを受け46年4月10日に行われた衆院選では、複数の候補に投票できる大選挙区連記制だったこともあり、一挙に39人の女性議員が誕生。2005年の「郵政選挙」で43人が当選するまで、女性当選者数の最多記録だった。