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 生活面の新年連載「家族って」では、経済的に自立できない兄弟姉妹を支えることが負担になる「きょうだいリスク」の事例を取り上げました。きょうだいが少なくなるなか、新しい家族問題について考えます。

家族の外につながり持つて 吉原千賀・高千穂大准教授(家族社会学)

 きょうだいが多かった時代には、家族の世話を分担でき、長子がきょうだい間の調整を担うこともありました。しかし少子化が進み、1人あたりの負担は重くなっています。

 経済状況の悪化で、成人しても自立できず親と同居を続ける人は珍しくなくなりました。今は比較的余裕のある団塊世代の親たちが支えていても、支えきれなくなる親は増えるでしょう。未婚率も上がっており、何かあった時はきょうだいなど血縁者に頼る人は多くなりそうです。さらに高齢化で、こうした関係性は今後長期化する恐れがあります。

 これが「きょうだいリスク」への関心が高まっている背景でしょう。自立していない人のケアをきょうだいが背負わざるを得ない状況が、リスクなのです。

 少ない家族にすべてのサポートを期待するのは、それこそリスクが高い。家族だけで抱え込まず、外部のサポート機関とつながったり、日ごろから地域や友人など家族以外の関係性も築いたりして、いざという時にサポートを求める先を分散しておくことが家族関係を良好に保つためにも大切です。(聞き手・藤田さつき)

援助は月1万円を限度に ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん

 2013年に「働けない子どものお金を考える会」を設立し、FPや社会保険労務士の計5人で有料相談に乗っています。25年前は相談してきた親の8割が子どもの生活を抱えられる資産があったのに、今は半々。社会全体ではもっと厳しい状況でしょう。

 自立していないきょうだいがいる場合、親が要介護になったり亡くなったりすると、残るきょうだいにはそのケアや手続き、相続分の減少など負担が必ず生じます。まずは勇気を出し、親が元気なうちにできるだけ早く、きょうだいや親の資産状況、将来自分に求めたいことを確認し、紙に書き出しましょう。時間がたつと事態は深刻になり、かぶる波も大きくなるため、先送りは避けるべきです。そしてできること、できないことをシビアに判別し、親子で情報を共有しましょう。

 きょうだいへの資金援助は、自分や自らの家族へしわ寄せがいかないように、月1万円までにとどめたいところです。援助のし過ぎは共倒れにつながります。きょうだいには、定職に就かなくても行政の就労支援などを利用して月2万~3万円の収入でも働くよう促しましょう。社会とつながりを持つことが大切です。(聞き手・藤田さつき)

お金を渡す余裕ない

 読者からは、自らの「きょうだいリスク」についても反響が寄せられました。一部を紹介します。

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●「2歳と生後3カ月の子がいる専業主婦です。東京で一人暮らしをする30歳の兄がいます。フリーランスで働いていますが生活費が足りず、父が2カ月で15万円ほど仕送りをしています。兄はお金がなくなると『このままじゃ餓死する』と訴えますが、収入があればゲームや本を買っているようです。我が家は夫の収入だけでは余裕がないので、来年には私も働きに出ます。父の死後、兄が私にお金を要求してくると困るので、父に『仕送りをやめて』と言っても『親にとって子どもは幸せでいてくれれば何でもいい』と聞き入れてくれません。子どもの進学や夫婦の老後のためにためたお金を兄には渡せません」(岐阜県・20代女性)

●「5歳下の弟は独身で派遣社員。パーキンソン病の母と2人暮らしです。給料は趣味に使い、家にお金を入れず、母はそんな弟のわがままを許し、互いに依存し合っているように見えます。『今後どう協力し合うか話し合おう』と弟に持ちかけても、断られてしまいます。母が元気だった頃は、親子、きょうだいの関係が問題だとは思いませんでした。いずれ母が動けなくなるなどすれば、今の状態は続けられません。その時になって急に頼られても戸惑うばかりだと思います。子を突き放せない親の弱さが、親に依存する子を作ってしまうのではないでしょうか」(横浜市・50代女性)

●「娘の夫の兄は、職場で精神的に追い詰められて、引きこもり状態です。さらに昨年、大腸がんであることが分かり、手術を経て人工肛門(こうもん)を付けました。精神科の病院に入院していますが、そこからも出るように求められました。彼をずっと世話してきた母親は昨年亡くなり、父親はすでに80代と高齢です。また、人工肛門だと受け入れる施設も少ないようです。共働きの娘夫婦がケアをしたり、経済的に援助したりするのは無理。十分な資産もない家族が他の家族を支えるのには、限界があります。病院は行政に相談をと言い、役所は病院で紹介してもらってと、責任のなすり合い状態のように感じました」(東京都・70代女性)

●「2人で暮らしていた母(73)と知的障害者の弟(47)のため、私たち姉妹は家をリフォームして用意しました。しかし母は近くの職場に住み、弟だけがその家で暮らしています。弟が一人暮らしになって、今まで面倒を見てきた母は世話を放棄するようになりました。弟は身なりが不潔になり、食事も1日1食。週1回はヘルパーさんを頼んでいますが、それも嫌がります。私が母を手助けしようとしても、すぐに怒鳴り聞く耳を持ちません。母と弟をこの先どうしたらいいか、悩みはつきません」(大阪府・50代女性)

「絆」に縛られる親子関係

 連載では、親子の「絆」に縛られる事例も取り上げました。親子関係の悩みも寄せられています。

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●「娘と20年以上、ほとんど会話していません。夫は娘と時々会っていますが、『お母さんは私の気持ちを無視し続けた』など、30代後半になった今も話すようです。私自身も自分の母に負の感情を抱き、幼い頃は母のヒステリックな叱り方が怖く、外での出来事をまともに伝えられませんでした。母娘関係に、かみ合わないものを引きずっている人も多いのでは。今は娘が心の平安を得て幸せになってほしいと思っています」(横浜市・60代女性)

●「母は弟だけに愛情とお金を注ぎました。子どもの頃は母からののしられ、人格を否定され、夕食作りや掃除など私だけがこき使われました。父も助けてくれず、私は家族という小さな閉鎖的な場所でひとりぼっちでした。20年ほど前、母が入院した時、私は病院に行きませんでした。すると、事情を知らない親族から責められ、私はパート勤めを辞めて病院に通いました。母は亡くなりましたが、残された80代の父に何かあった時、どうするかで悩んでいます。心から親の面倒をみられたらいいのに。悩み続けなければならないのは親子の『絆』のせいでしょうか」(福岡県・50代女性)

家裁の調停で問題整理する方法も

 家庭裁判所(家裁)の元調査官らが立ち上げた公益社団法人「家庭問題情報センター」では、離婚や家庭内暴力(DV)、相続などの電話相談を受けています。2014年4月から2年間に東京窓口で受けた親族間の悩み(離婚などの夫婦関係を除く)の相談内容を分析すると、きょうだい関係が約3割を占めました。

 民法では、親や成人したきょうだいは互いに扶養する義務があると定めています。ただその程度は、自分の生活を成り立たせた上での余力の範囲とされています。きょうだいや親と援助や介護の負担などを巡ってもめた場合は、各都道府県にある家裁へ「親族関係調整」の調停を申し立てることが可能です。費用は郵送費を含んで約2千円で、調停委員会が解決のための助言をしてくれます。問題点を整理し、自立に向けて促す力になります。

 自立が難しいケースでは、生活保護などの行政窓口につなぎ、きょうだいに障害があれば親が存命のうちに施設を探すことも勧めています。

 センターの担当者は「きょうだいをどう自立につなげるかがテーマの悩みが目立ちます。家族が丸抱えしようとしないことが大切です」と話しています。

 東京の電話相談は月、水、金曜午前10時~午後4時(03・3971・8553)。名古屋にも窓口があります。(藤田さつき)

 「家族は支え合うもの」。そういう思いが強いゆえに、家族にまつわる問題を「人には言えず、ずっと悩んできた」という声をいくつも聞きました。

 家族が支え合えればいいですが、いろいろな事情からそうはいかない場合もあります。家族間の問題は他人に見えにくく、話したり理解してもらったりするのは簡単ではありません。家族ゆえに「支えるのは無理」と割り切れず、複雑な思いを抱える人もいます。家族の介護やお金に関わる問題は切実で、誰の身にも起こり得ます。抱え込まず、打ち明けたり、相談したりする機会や勇気が必要なのだと思います。(斉藤純江)

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