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 C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品を販売したなどとして、警視庁は7日、いずれも住居不定の無職、加瀬芳美(49)と夫の敬幸(43)の両容疑者を医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕し、発表した。2人は「販売したのは本物です」などと容疑を否認しているという。

 2人は別の薬物事件で広島県警に逮捕、起訴され同県内で勾留されていた。警視庁が逮捕状を取り、同日、身柄を東京都内に移送して逮捕した。

 生活環境課によると、逮捕容疑は2017年1月4日、東京都千代田区の医薬品卸売業者「エール薬品」(解散)に、偽造したハーボニー入りのボトル2本を1本あたり80万~100万円で販売するなどしたというもの。同社関連会社の事務所で売り渡していたといい、周辺の防犯カメラやタクシーの乗車記録などから、2人が浮上した。

 偽造品の流通は昨年1月以降、奈良市や東京都内などで計15本が確認され、厚生労働省などの調査で、全てが「エール薬品」が個人から購入し、卸売りしたものと判明していた。警視庁は両容疑者を含むグループが偽造品販売に関与した疑いがあるとみて調べる。

 ハーボニーは米・ギリアド・サイエンシズ社が製造販売するC型肝炎薬。国内では15年9月に販売が始まり、薬価は1錠約5万5千円、28錠入りのボトル1本あたり約153万円。ギリアド社の市販後の調査によると、12週間の経口服用で98・7%の確率でウイルスを完全に排除できるという。発売から17年末までに8万人以上に処方された。

 厚労省などが偽造品の一部を分析したところ、中身は市販のビタミン剤や漢方薬、別のC型肝炎治療薬「ソバルディ」や本物のハーボニーだった。患者が偽造品を服用したケースはなく、奈良市で偽造品を処方された患者もすぐに真正品と交換したため、健康被害はなかった。

「正規ルート」で偽造品流通「強い衝撃」

 C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が流通した事件で、2人が医薬品医療機器法違反の疑いで警視庁に逮捕された。

 加瀬芳美(49)、敬幸(43)の両容疑者が偽造ハーボニーを持ち込んだとされる「エール薬品」は、薬局や病院などから余った薬を安値で買い取り転売して利益を得る、いわゆる「現金問屋」と呼ばれる。医薬品販売業の許可を持つ正規の業者だった。

 同社はホームページなどで「秘密厳守」「即現金買取」などとうたっていた。問題発覚後、元社長は一連のハーボニーの偽造品について、外箱や添付文書のない状態で正規価格の5~7割の値で買い受けていたと説明。偽造品という認識はなかったと述べていた。同社は昨年4月、東京都から業務停止命令を受けている。

 厚生労働省は近年、個人輸入などによる一部の流入を除き、偽造薬の流通は存在しないとの立場をとっていた。許可を持つ業者などの「正規ルート」で偽造品が出回り、薬局から患者の手に渡った今回の事件は、業界関係者や厚労省に衝撃を与えた。

 今回の事態を受けて厚労省は昨年、偽造品の流通防止のための検討会を設置。医薬品取引の際の身元確認を徹底し、購入者の氏名や住所を帳簿に記録することなどを新たに明記した改正省令を公布した。

 一方、先月末に敬幸容疑者に面会したという知人男性によると、敬幸容疑者は「頼まれてシールを取りに行き、運んだだけ」と話したという。「シール」とは偽造品のボトルのラベルとみられるが「なぜ警視庁に逮捕されるのかもわからない」と驚いている様子だったという。(荒ちひろ、高島曜介)