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 腫瘍(しゅよう)内科医として、米国で乳がんの診療や治療法の研究をする上野直人さん(53)。患者が治療に主体的に関わることの大切さを唱えます。自身もがんを経験した患者の視点からもお話を伺いました。

昨夏に骨髄移植

 3年ほど前に血液がんの一つ、骨髄異形成症候群(MDS)との診断を受けました。正常な血液が作れなくなる病気です。白血球の数が減り、ここ2年間ぐらいは赤血球の数も減り、貧血状態でした。仕事は出来ても、元気に走り回ってという気持ちになれませんでした。

 今、53歳。進行性乳がんの患者さんの治療と生活の質を改善していくという情熱が私にはあります。医療従事者の教育にも取り組みたいと思っています。しかし病気を抱えていると想像力が働かず、新しいことをするのは難しい。化学療法を受けながらコントロールしていく選択肢もありましたが、治すには他人から骨髄中で血球をつくる元となる造血幹細胞を移植するしかありません。思いきって移植することを決め、昨夏に手術を受けました。

 がんは2回目です。10年前にも「悪性線維性組織球腫」というがんになり、太ももにできた腫瘍(しゅよう)の切除手術を受けました。このとき、自分がリタイアする感覚がなくなりました。生きている60代、70代の自分のイメージが完全に吹っ飛びました。以前は子どもたちのスキーのインストラクターをやろうかなどと考えていましたが、将来が見通せなくなりました。逆に今、与えられている時間を大切にしようと思うようになりました。

 移植手術にリスクはあり、失敗に終われば後悔する。わかったうえで決めました。仕事にも復帰でき、良かったと思っています。

うえの・なおと
1964年生まれ。滋賀県出身。和歌山県立医大卒。93年から米テキサス大MDアンダーソンがんセンターに勤める腫瘍内科医。乳がんの治療や研究、チーム医療の普及に力を入れる。著書に「一流患者と三流患者」(朝日新書)。

普段通り接してほしい

 がんなどの病気の患者さんに、「そっとしておきましょう」というのはよくないと思います。決めるのは患者さん本人。周囲の人はアプローチして拒絶されたら引くべきだし、患者さんの糧になるのであれば、普段通りに接するべきです。

 移植の手術を決めたとき、どう周囲に伝えるかについて戦略を練りました。病院内の1部門のリーダーとして信頼を失わないためにはどうしたらよいかと考えました。部下や上司ら合わせて約50人、それぞれと個別に話しました。選んだ治療方針やしばらく治療で不在にすることを伝え、普段通りにコミュニケーションしてほしいとお願いしました。「ほかの人に尋ねられたらどう答えたらいい?」と聞かれたときには、「上野先生はきちんと答えるので、直接本人にメールしてほしい」と伝えてもらうようにしました。実際にメールをくれた人もいるので、これも良かったかもしれません。

 日本には僕が設立した、チーム医療を学ぶグループがあります。帰国した際、そのメンバーにも集まってもらい直接話をしました。その内容はビデオで撮影し、出席できない人には動画のリンクを送って、「見てください。それから話しましょう」と伝えました。

 最初のがんの線維性組織球腫の…

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