はげ上がった頭に、細く鋭い目、ゴワゴワとしたヒゲ。朝鮮を総督として武断統治し、首相の時にはシベリア出兵した。こわもてでタカ派の印象が強い寺内正毅だが、故郷の甘く柔らかな菓子には目がなかった。創業130年を超える山口市の菓子店・山陰堂の「名菓舌鼓」だ。
JR山口駅近くのアーケード商店街。白壁に瓦ぶきでいかにも「老舗」の風格を漂わせる山陰堂本店が立つ。そのショーケースに並ぶ様々な菓子の中でも、押しも押されもせぬ看板商品だ。
主に贈答用の高級品として知られる。1個の大きさは5センチほど。小さな雪玉のような菓子を手に取ると、まず生地の柔らかさに驚いた。少し力を入れるだけでつぶれてしまいそうだ。口に運ぶと、その柔らかさが心地良い。求肥(ぎゅうひ)と白あんがなめらかに混じり合い、口の中で溶けていった。
店は1883年(明治16年…