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 ビデオカメラの前で自分の髪を指し、「元は直毛。これは抗がん剤パーマ」と話すと、隣のゲストが笑った。治療の副作用も場をなごませるネタにする。

 岸田徹さん(30)は、若くしてがんを経験した人たちと対談するネット上の番組「がんノート」を4年前から続けている。月2回、約1時間の生放送だ。

 テーマは、体や気持ちの変化、治療費用や恋愛、性、将来のことなど。話しづらい話題でも、関西育ちのしゃべりと絶妙な間でゲストから本音を引き出す。

 IT関連会社に勤めていた25歳のとき、転移が進んだ胚(はい)細胞腫瘍(しゅよう)が分かり、「5年生存は五分」と言われた。その告知を上回る衝撃が、手術の後遺症で射精ができなくなったことだった。「男としてのアイデンティティーすら奪われた」と感じた。しかし、性に関する情報は得にくかった。

 経済的な問題にも直面した。復職したものの以前のようには働けず、通院の日は欠勤扱いとなってしまい、収入が激減。治療費や検査代がかさむ中、節約のために1日1食の時期もあった。

 「こうした退院後のリアルは、経験者がオープンにしないと社会に伝わらない」。その思いが活動の原点だ。

 生放送なら、病床の患者とライブ感をもってつながることもできる。1人で始めた活動は共感を呼び、賛同する仲間が増えた。「がん経験者が笑って輝ける社会にしたい。そのきっかけづくりです」(池田良)

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岸田徹さん(30) 大阪府高槻市出身。25歳で胚細胞腫瘍の治療を受け、退院後、体力的な理由でIT関連会社を退職。3年前から国立がん研究センターの広報部門で非常勤で働く。東京都豊島区で妻と2人暮らし。

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