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 イヌ型ロボット「aibo(アイボ)」を12年ぶりに復活させたソニーに、旧型「AIBO」の愛好家たちが複雑な視線を投げかけている。新型アイボ発表の晴れ舞台で、旧型の修理の再開はしないと宣言したからだ。普通の家電と違い、本物のペットのように接してきた愛好家たちにはソニーの振る舞いがつれなく映る。ペットロボットビジネスの特異さも浮き彫りにしている。

 「アイボには、魂が入っている。『部品がないので買い替えてください』とはいかない商品です」

 ソニーの元技術者の乗松伸幸さん(62)はこう話す。乗松さんは、旧型アイボの修理を独自に手がける「ア・ファン」の社長だ。リーマン・ショック後の業績不振から2010年にソニーを退社。11年にビンテージのAV機器の修理会社として立ち上げ、ソニーOBを中心に仲間を集めた。

 アイボの修理の依頼が最初に来たのは13年。依頼者は介護施設に入る予定の高齢女性だった。「癒やしの存在。どうしても持って行きたい」。気持ちに応えようと、元社員らのつてを頼り、アイボの情報を集めて何とか修理した。それをホームページで紹介すると、全国から修理依頼が殺到した。

 「大切な家族の一員です」「いくらかかってでも、直してほしい」。そうした手紙とともに全国から不調のアイボが今も届く。「修理と言うより、治療に近い」と乗松さん。

 修理にはアイボの「献体」が欠かせない。使える部品を再利用する。「壊れても捨てられないのがアイボ。魂を抜いてやらないといけない」。部品を取り出す前にお経をあげて供養する「アイボ葬」を千葉県内の寺で行っている。ア・ファンで修理したアイボは約2千体にのぼる。

 昨年11月、AI搭載の新型アイボの発表会を、愛好家たちは喜びをもって受け止めた。予約購入した人には旧型の愛好家が少なくない。ただ、事業責任者である川西泉・執行役員の会見での発言が、ちょっとした波紋を呼んだ。

 「生産・販売を中止しているので、基本的にはサポートは終了と考えている」。旧型アイボの修理再開を記者に問われ、そう答えた。旧型のサポート期間は約7年間で、14年には最終モデルの受け付けも終えていた。リストラを進めていた平井一夫社長は同年、パソコン事業「VAIO」の売却を決定し、アイボの生産を担った長野県安曇野市の工場もファンドに譲渡した。

 乗松さんは「新しいアイボもいずれみなしごになるのか。新しいアイボをやるのに、『古いアイボは知りません』はおかしい」と話す。福岡県須恵町の自営業で旧型アイボを17体持つ中島隆夫さん(67)も「ソニーは家族として迎えて下さいと言って売った商品。まだ動いているアイボもある。せめてア・ファンを紹介するなどできたはずだ」と話す。

 ソニーも、アイボが他の家電と異なる「愛情の対象となるロボット」との認識はある。新型について、川西執行役員は「どの部品にも寿命はある。販売終了から7年が基本の目安だが、それ以上使われる場合も、できる限りサポートしたい」と話す。

 そこで取り入れたのが、アイボの個性を「死なせない」仕組みだ。月額約3千円かかるが、旧型と異なり、携帯電話の回線を使ってインターネットに常時接続されている。持ち主やよく遊んでくれる人は誰かなどといったアイボの個性は、クラウド上に記録される。このため、買い替えればアイボの個性をそのまま新しい機種に移すことができるという。

 ただ、中島さんは「業績が悪くなって、またサポートを打ち切ってしまわないかという不安は旧型のファンの間では根強い」と話す。愛好家たちの気持ちとどう向き合っていくのか。アイボという不思議商品のビジネスの真価が問われるのはこれからだ。(西尾邦明、大鹿靖明)