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 五輪史上初の南北合同チーム、女子アイスホッケーの「コリア」は14日、1次リーグ最終戦で日本と対戦した。政治主導でチーム結成が決まって1カ月足らず。「ウリヌン ハナダ(私たちは一つ)」の大声援を背に、体制の違う国で生きる若き選手たちが、共に初勝利を目指した。

 第2ピリオド、合同チームのグリフィン選手の放ったパックが、日本のゴールに滑り込んだ。3試合目で初めての得点に、地鳴りのような大歓声が上がった。「よくやった」。白地に青い朝鮮半島が描かれた統一旗が観客席で揺れた。

 試合は、世界ランキングで格上の日本が序盤から押し気味に進めた。一方で観客席の応援は、統一旗や韓国国旗を手にした韓国の観客が圧倒。そろいのジャージーを着た北朝鮮からの応援団も声を合わせた。

 日本の応援団が日の丸を振って「ニッポン」コールを始めると、対抗するように「コリア」コールが起きる場面もあった。家族4人で来たソウルの会社員、朴喜駿(パクヒジュン)さん(49)は「日本戦は特別だ。絶対勝ってほしい」と力を込めた。

 国際外交の争いにとらわれることなく、スポーツを楽しみたいという人も。ソウルの崔柄駿(チェビョンジュン)さん(67)は「南北と日本という3カ国の選手が一緒にプレーできるのは奇跡だ。国同士が仲良くなる契機になってほしい」。三重県の会社員、古谷貴徳さん(45)は試合前、日韓の両国旗を身につけ、「統一旗」を手に持っていた。「日本を応援するが、開催国である韓国への尊敬も忘れていない」と話した。

 試合後、地元江原道在住の少年(12)は「負けて残念だけど、日本はよくやった。スポーツは実力が上だったほうが勝つだけ」と淡々と話していた。(江陵=金順姫武田肇

わだかまり、消えたわけでは…

 五輪は、選手のためにあるのか、それとも国のためにあるのか――。板挟みになった韓国選手たちの心はこの間、揺れてきた。

 合同チームの結成は、開幕まで1カ月を切った1月の板門店での南北協議で決まった。頭越しで突然降ってわいたような話に、選手たちは一斉に反発した。

 文在寅(ムンジェイン)大統領がアイスホッケーを「マイナー種目」とみなして「国民の関心が集まる」と話したり、李洛淵(イナギョン)首相が「メダル圏内にいない」と韓国チームを軽んじるような発言をしたりしたことは、世論の怒りを買った。

 韓国チーム自体が開催国枠での出場で、米国やカナダ出身の選手も加わって強化してきた。それでも他のチームに比べれば世界ランキング下位だ。北朝鮮はさらに弱い。そんな中でも、「条件は選べないが、最善を尽くす」というカナダ人のマリー監督のもと、チームは前向きに努力した。

 9日夜の開会式では、合同チームの主将、朴ジョンア選手(韓国)とチョン・スヒョン選手(北朝鮮)が聖火リレーに参加。2人で最終点火者の金姸児さんに聖火を渡した。

 わだかまりが消えたわけではない。

 初戦でスイスに大敗した後、朴ジョンア選手は記者団に「北韓(北朝鮮)の選手が来たので、韓国選手がプレーできない面があった。その意味では悪い面もあった」と素直に内面を吐露した。

 一方、北朝鮮の選手は一貫して「国のため」という姿勢を貫く。初戦後の記者会見で、北朝鮮高官らが観戦したことへの感想を問われたチョン・スヒョン選手は「最高の栄誉」と答えた。朴ジョンア選手が「特別なことはない」と答えると、チョン選手は驚いたように朴選手を見つめた。

 日本戦は、合同チームの選手にとって、また別の重圧がのしかかった。韓国や北朝鮮の選手らにとって、「植民地支配を背景にした日本戦は別格」(韓国のスポーツ関係者)だという。韓国のチェ・ジヨン選手(19)は12日、「北の選手とも、日本戦は絶対勝とうと話している」と報道陣に話した。

 試合後に会見したマリー監督は「五輪で最高のパフォーマンスができた。最後まであきらめずにプレーしたのは誇りだ」と選手をたたえた。日本戦については「歴史的なことは意識せず、破ればアジアの首位に立てるライバルとだけ考えていた」と語った。

 得点を決めたグリフィン選手は、北朝鮮の選手について「『ラインチェンジ』という英語を自分で使うなど、積極的にチームに慣れようとする姿勢だった」と評価した。朴ジョンア選手は「準備の時間が足りなかった」と話し、悔しさをにじませた。