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 2017年中に得た所得を税務当局に申告する確定申告が16日から始まる。3月15日まで。昨年は仮想通貨が大幅に値上がりし、大きな利益を得た人も多い。確定申告になじみのない会社員や主婦、学生でも申告を求められる人が続出する可能性もある。仮想通貨の課税の仕組みをまとめた。

 仮想通貨交換業者ビットポイントジャパン(東京)が10日に開催した「仮想通貨の税金セミナー」。会場には、20~30代の会社員を中心に約300人が集まった。

 神奈川県の男性会社員(36)は、昨年9月に仮想通貨の取引を始め、70万円の利益を得た。「税率がどのくらいになるのか計算しないといけない。経費も認められるみたいだけど、初めての確定申告で不安が大きい」。東京都の男性会社員(32)は昨年6月に60万円ほどの元手で取引を始めたが、保有通貨の価値が一時2千万円ほどに膨らんだ。「今年は利益を確定するつもりで、確定申告の勉強中です」と話す。

 昨年は代表的な仮想通貨「ビットコイン」の価格が1年間で20倍になるなど、仮想通貨の価格が急騰。スマートフォンで気軽に取引を始められることもあり、会社員や学生にも急速に普及し、利用者は数百万人とも言われている。

 そのなかで、一定以上の利益を得た人たちは、納税の手続きが必要になる。

 個人が仮想通貨の売買で得た利益は「雑所得」と呼ばれる。一般的な会社員の場合、雑所得や不動産所得など、給与や退職金以外の所得が計20万円を超えると確定申告が必要だ。アルバイトをしていない学生や主婦は原則として、収入から差し引かれる基礎控除の38万円を超えると確定申告が求められる。

 仮想通貨の利益は、給与など、ほかの所得と合算して所得税率が決まる。株式などの売買益の税率が一律約20%なのに対し、所得が多いほど税率も高くなるのが特徴だ。合計所得が195万円以下なら5%だが、900万円超で33%、1800万円超で40%、4千万円超で45%。一律10%の住民税を合わせると、最高で55%の税率が適用される。

 では、仮想通貨の利益は、どうやって計算するのか。国税庁は昨年12月、具体的な事例を公表した。たとえば、仮想通貨を取得した時より高値で売った場合、その差額が利益になる。ただ、値上がりで含み益があっても、売却しなければ、利益とはみなされず、申告も必要ない。

 仮想通貨で商品を購入した場合は少し複雑だ。たとえば、100万円で取得した仮想通貨が値上がりし、その通貨で200万円の商品を買った場合、取得価格との差額の100万円が利益とみなされる。仮想通貨を別の仮想通貨と交換した場合も同じで、取得価格との差額が利益とされる。

 仮想通貨は今年に入り、交換業者「コインチェック」(東京)による顧客資産の流出や、海外での規制強化の動きを受け、価格が急落している。取得価格を下回る「含み損」を抱える人も多い。

 しかし、昨年中に確定した利益には、いまの「含み損」とは無関係に税金がかかる。昨年の取引で巨額の利益を得ていれば、いまは「含み損」で支払い能力が低くても、多額の税金を支払う必要が出てくる。

 仮想通貨の利益は、株の売買などの損失と相殺して税金を安くすることや、損失を翌年以降に繰り越すことも認められていない。

 かつて同じような状況がみられたのが、2005年ごろに急拡大した外国為替証拠金取引(FX)だ。FXは業者に「証拠金」として一定のお金を預け、その何倍もの外貨を売買できる投機的な取引で、当時は、FXの利益も仮想通貨と同じ課税の方式だった。このため、一方的に円安が進んでいたころに巨額の利益を上げた会社員や主婦が、その後の円高局面で巨額の損失を抱え、税金を払えない人が続出した。

 税理士の森井じゅん氏は「仮想通貨は、利益が出ても次の年の税負担が重い。納税に備えて十分な資金を用意してほしい」と警鐘を鳴らす。(長崎潤一郎)

コインチェックからの返金 課税は?

 コインチェックが顧客に返金するお金にどう課税するかは、今後、論争になる可能性がある。

 同社は、流出した顧客の仮想通貨「NEM」を売買停止時から翌日夜までの平均レートで日本円に換算し、26万人に総額463億円を返金するとしている。

 顧客の取得時よりも値上がりしていれば、差額が利益とみなされ、課税される可能性が高い。そうなれば、強制的に利益を確定させられることになり、納税を迫られる被害者の不満が高まりそうだ。

 ただ、損害賠償や慰謝料の名目で返金されると、課税されない可能性もある。所得税法では、交通事故の損害賠償金などは非課税と定めているからだ。旧ライブドアの粉飾決算事件では、株価急落で同社が株主らに支払った賠償金について、課税対象と主張する国税当局と株主側が訴訟で争い、最終的に非課税とする判決が確定した。いまは返金の詳細が示されておらず、国税庁は「現時点では課税の取り扱いは一概には答えられない」としている。