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 「岐阜市鷺山1769の2」。一見普通の住所だが、岐阜市にはこの住所で約250世帯が暮らす。市はこの問題の解決に向けて、新年度予算案に調査費用を盛り込む方針だ。来年2月に、約70年の時を経て一軒一軒に住居表示に基づく住所が割り振られる見込みだ。

 同じ住所が約250世帯あるのは、岐阜市北部の一角にある住宅街。一見、ごく普通の住宅街だが、表札や郵便受けに住所を書いていない家が目立つ。住所が同じため、書いても意味がないのだという。

 なぜ同じ住所なのか。きっかけは戦前にさかのぼる。市によると、鷺山1769の2の一帯は戦前はただの河川敷だった。戦後、住宅難の解消のため、市が河川敷を国から購入し、一戸建ての市営住宅を建てて分譲した。その際、番地を変えなかったことが原因で70年近く放置されてきた。

 同じ住所が何軒もあることで、郵便物の誤配▽警察、消防、救急などの連絡の支障▽地域外から来る人の案内が大変、などの問題があるという。2002年の岐阜市長選で初当選した細江茂光市長が、当時公約に掲げていた「市長の1000回トーク」の一環で鷺山地区を訪れたとき、住民から要望を受けて市は対策を検討してきた。

 250軒も同じ住所ということでさぞ不便かと思いきや、意外にも「別に不便ではない」と話す住民も。鷺山1769の2に住み、同一住所に同じ名字が3軒あるという男性(82)は「慣れたら別にどうってことない。郵便配達の人もしっかりしているので、間違えられることもない」と話す。

 また、このエリアには「若水町」など独自の地名がある。鷺山1769の2に住んでいる人の中には、少しでも分かりやすくするために「鷺山若水1769の2」など、オリジナルの住所を名乗る人もいる。

 近くの理容店では、家が分からない人のために地図を備え付けている。「地域の外から来る人には確かに分かりづらいかもしれないが、郵便も宅配便の人も慣れている人は普通に届けてくれる。家を聞かれて名字が同じでも、○○に勤めていた○○さん、と言ってもらえたら分かる」という。

 細江市長は1月の定例会見で、新年度当初予算案に調査費用などを計上する方針を表明。「鷺山1769の2」の約250世帯に加え、「鷺山1768の5」にも約50世帯あり、この約300世帯に周辺の80世帯を含めた約380世帯に住所を割り振る。市市民課によると、約1300万円を盛る見込み。

 細江市長は「今まで大変ご苦労しておられた郵便物の誤配や、配達されないなどの問題が解消されると思う」と話す。(山野拓郎)

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 〈住居表示〉 同じ地番の上に多くの家があるなど、分かりにくい住所を分かりやすく整備する事業。通常は公図や登記の整理も一緒に行うが、今回の鷺山地区は地区内の境界が多く時間がかかることなどから、境界を画定させずに家ごとに住居番号などを付与する。