永田豊隆
それは、人の心が壊れていく過程を見せられるようだった。
私が帰宅すると、妻はデスクライトだけをともした暗い部屋にいた。
目に涙を浮かべ、「衝動的に自殺しそうで怖いから、預かってほしい」。そう言って、手にしたカッターナイフを差し出した。
妻の話に「あの男」という言葉が出てくるようになった。外に出ると、「歩いている人の顔が、あの男にみえる」とおびえた。しかし、独りで家にいると男が現れそうな気がして、ベランダから飛び降りたくなるという。
唯一の癒やしだった過食嘔吐(おうと)も気持ちを鎮めてくれない。「怖い、怖い、どうしようもなく怖い」と震えた。
妻が初めて、「精神科か心療内科を受診する」と言い出した。
ただし、条件が二つ。一つは、…
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朝日新聞社会部