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 スピードスケートの会場に到着した時、ポーチがないことに気づいた。原稿を送るのに使うカードなどパソコン周辺の小物類を入れていた。「もう戻ってこないかな」。半ば諦めていたら4日後、インフォメーションセンターに届けられていた。

 会場間を結ぶバスの中で見つかったそうだ。後から乗った人が気づいて運転手に渡し、運転手が届けてくれたという。

 ICレコーダーや携帯電話、手袋……。同僚も様々な紛失をしたが、数日後にはそれぞれ手元に戻ってきた。

 「もし皆さまが東京で何かをなくしたなら、ほぼ確実にそれは戻ってきます。たとえ現金であっても」。2013年、夏季五輪招致の最終プレゼンテーションで、日本は世界にアピールした。「ほぼ確実に」は疑問だが、それが訪日客への大きなアピールになるのは間違いない。

 平昌の記者室ではロボットが席まで水を運んでくれ、会場周辺はどこでもWiFi(ワイファイ)が使える。不自由ない設備に、相当なコストがかかったはずだ。でも何年か後にこの五輪を思い返す時、私が一番に思い浮かべるのは「困ったですか。(戻ってきて)良かったですね」と、ポーチを受け取る時に日本語で手続きをしてくれたボランティアの温かい笑顔だろう。(渡辺芳枝)