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 津波で大きな被害を受けた浪江町の請戸地区にある●野(●はくさかんむりに「召」、くさの)神社で、伝統の安波祭(あんばまつり)が18日、東日本大震災と原発事故後、7年ぶりに催された。社殿が流された神社の境内には避難先から町民が集まり、優雅な田植踊(たうえおどり)などに見入った。

 請戸漁港近くで開かれる安波祭は豊漁や海の安全を祈る行事で、約300年の歴史がある。毎年2月の第3日曜日に開かれていた。しかし原発事故で住民らが避難を余儀なくされ、祭りの存続が心配された。

 安波祭は請戸の人たちにとって心のよりどころだ。請戸芸能保存会が「祭りを絶やしてはいけない」と、避難先の福島市や二本松市の仮設住宅で田植踊などの伝統芸能を披露してきた。

 今回、原発事故による避難指示が帰還困難区域を除いて昨年3月末に解除され、もとの場所で念願の再開となった。請戸漁港では先月、漁船が大漁旗を掲げて出港する出初め式が7年ぶりにあり、地域に喜びの輪が広がる。

 この日、土台が残る神社の境内には、仮の社の前に避難先から多くの町民が駆けつけた。勇壮な神楽の後、町外に避難している女性ら9人が田植踊を奉納した。赤や青の衣装が青空に映える。住民らは手拍子を送る。踊り終えた女性たちに、見守る人たちが温かな拍手を送った。

 請戸出身で、今はいわき市で暮らす会社員の菅野美和さん(30)は「かけがえのないふるさとで踊れ、本当に幸せです。安波祭は私たちの誇り。田植踊を次の世代にしっかりと引き継ぎたい」と笑顔で話した。

 保存会の渡部忍会長は「安波祭は請戸の人と人の心をつなぐ大切なもの。避難している人たちの心のケアにもつながる。社殿の復活を目指し、来年以降も請戸で開きたい」と話した。(江川慎太郎)