【動画】まわし姿の男たちが「宝木」を奪い合う「西大寺会陽」。女性が水垢離で身を清める「女会陽」もある
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 年々外国人参加者が増えている西大寺会陽。外国人から見た「裸祭り」とは。外国人のグループと一緒に記者が参加してみた。

 「最初祭りのことを聞いたときは、ほんとにヘンだと思った。なんでハダカ。ヤベエ」。西大寺会陽の数日前、岡山市内で外国語指導助手(ALT)をしているカナダ人のマッケンジー・リチャードーソンさん(24歳、愛称マック)が日本語でそう語った。

 ALTの仲間と初めて参加したのは2年前。「1回で十分だと思ったけど、時間が経つうちに楽しい思い出だけが残った」。カナダにも似た祭りはあるかと問うと「新年を祝ってみんなで冷たい海に入るイベントがあるけど、全然違う」。

 昨年は宝木に一度触れた気がしたが、本堂の階段から落ちて足を負傷。3回目の「今年こそは」と意気込むマックと、彼の仲間たちと一緒に会陽に参加させてもらうことにした。

 会陽当日の午後5時。岡山駅西口に会陽に参加する11人の外国人が集まった。初参加は7人。出身地は欧米からアジアまで様々だ。バスを貸し切って会場の西大寺まで向かうという。

 移動中、リーダーのマックが祭りの説明をした。「大床のはじにいると階段から落とされる」「木の柱に押しつけられると危険だから近づくな」など助言は具体的だ。注意事項も忘れない。

 「絶対人を殴ってはいけない。これは『友好的な競争』なんだ」

 グループにはひときわ立派な体格の男性も。航空会社の客室乗務員でイタリア人のマルコ・デ・トンマーゾさん(28歳、愛称マルコ)。「この日のために3カ月間トレーニングしてきた」。昨年、偶然インターネットで会陽を知り、初参加した。世界中を旅しているが、わざわざ参加する祭りは会陽だけだという。「去年すごく楽しかった。今年こそ宝木を取りたい」

 境内近くで受付を済ませてまわし姿になり、一行は近くの飲食店が出すテントへ。店主らが毎年無償で豚汁などを振る舞っているという。突然現れたまわし姿の外国人集団にも笑顔で「どんどん食べていってね」と声をかけてくれた。

 温まった体で境内に向かい、全員肩を組んで「わっしょい!」のかけ声とともに進んだ。垢離取場(こりとりば)で身を清め、境内をぐるりと回る。マックは観衆から「頑張れ」と激励され、「がんばります」と叫んだ。観衆たちと何度もハイタッチを交わしながら進んだ。

 午後9時ごろ、再び本堂に向かうと大床の上は裸だらけ。仲間たちは果敢に渦に飛び込んで行き、10分もしないうちに姿が見えなくなった。初参加の英国人ジェームズ・チャップマンさん(22)は「地獄みたいだ。みんなおかしい!」と苦しげに声を上げた。

 午後10時、宝木投下の瞬間を迎えた。本堂の照明が消え、裸たちが幾つもの渦に分裂する。宝木など一体どこにあるのか。押し出されるように仁王門を出た。

 テントに戻ると、マルコが右足をひきずっていた。階段から落ち、たくさんの人に踏まれたという。「一度両手で宝木をつかんだ。でも取られてしまった」。マルコの右手に鼻を近づけると香のにおいが残っている気がした。「また来年も出るさ」

 マックは笑顔で戻ってきた。「3回目で祭りの意味が分かった気がする。宝木を取るより、みんなと一緒に参加する経験が何より楽しいんだ。1人で渦の中に入ってもつまらないよ」

 一緒に裸になり、笑顔のもてなしを受けながら、国籍を超えて全員が一体になるのを感じた。(小瀬康太郎)