石牟礼作品で語り継ぐ水俣病 朗読会「続けるのが大事」

奥正光
【動画】10日に亡くなった作家石牟礼道子さんの作品などを朗読し、水俣病を語り継ぐ「第2回早春の朗読発表会」=奥正光撮影
[PR]

 熊本県水俣市明神町の水俣病情報センターで18日、水俣病を語り継ぐ朗読会があった。発表した15人のうち6人が、10日に亡くなった作家の石牟礼道子さんが残した作品を読んだ。

 熊本県菊陽町の高添直美さんは、美しい海と人々の暮らしを語り継ぎたいと「苦海浄土」を選んだ。

 〈えっしんよい、えっしんよい。(中略)一匹一匹の尾や頭のはね具合まで、網の重みで漁師たちにはわかるのである。なにしろ海はいつも生きていた……〉

 「人間だけでなく、あらゆる生き物の命が聞こえ、水俣病を見過ごせずに、最後まで伝えようとしたのではないか」。石牟礼さんへのそんな思いを込めた。

 主催した「水俣病を語り継ぐ会」の代表吉永理巳子さん(66)は、あいさつで「今日の海はきらきら輝く『光凪(ひかりなぎ)』。早春の野山や海を誰よりもいつくしんだ大切な方を亡くし、まだ受け止めきれない」と心情を吐露した。石牟礼さんたちと水俣湾埋め立て地に野仏を建てる活動をしてきた。朗読で語り継ぐ取り組みにも、石牟礼さんは「続けることが大事」と励ましてくれていたという。

 朗読会では、夫の利夫さん(66)と自宅近くの海岸でつかまえたカニを、バケツに入れて石牟礼さんを見舞った時の様子がしたためられた本紙エッセー「魂の秘境から」を選んだ。

 〈無明闇中(むーみょうあんちゅう)〉 遠離一輪(おんりーいちりん) 流々草花(るーるーそーげ)

 夫婦は家に帰ってから、あの小さな蟹の子をどうしただろう。もと棲んでいた海辺へ戻してやったろうか。あわてて潮の中に逃げ戻ってゆく小さな蟹の子の姿が、いつまでもわたくしの目裏(まなうら)に残った〉

 吉永さんは「道子さんの作品には若い人がこれから生きていく糧がいっぱいちりばめられている。今日はハラハラしながら、見守ってくれたかな」と語った。

 会場では、石牟礼さんの「苦海浄土」を原作にした一人芝居「天の魚」も26年ぶりに県内で上演された。(奥正光)