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横山だいすけさん

 朗らかにハキハキしゃべり、よく笑う。「うたのおにいさん」そのままだ。昨春にNHKの「おかあさんといっしょ」を卒業し、民放やミュージカルへ活動を広げる。ぶれないのは「子どもと歌いたい」という原点だ。

 昔から歌と子どもが大好き。高校2年のとき、たまたま「おかあさんといっしょ」を見て、将来の夢が定まった。NHKに電話をかけて、おにいさんになる方法を尋ねた。

 先代のおにいさんが劇団四季の出身と知り、国立音楽大学の音楽学部を卒業すると四季に飛び込んだ。「ライオンキング」で役もついたが、「高校生からの夢が心の真ん中にあった」。2年間学べるだけ学び、おにいさんのオーディションを機に退団した。

 2008年、念願のおにいさんになった。歌う喜びも、小さな「おともだち」との触れ合いも思い描いた通りだったが、歌唱の先生に「だいすけ君の歌、つまらないね」と見透かされた。子どもも歌える歌は、詞もメロディーもシンプル。どう解釈し、自分なりの表現につなげるかが大事だ。「歌う人間が歌詞を理解し、景色を届けられて初めて子どもが一緒に口ずさむ。それまで歌ってきた合唱曲やクラシックと、根本的に何かが違った」

 転機は東日本大震災だ。その年、宮城県南三陸町で番組収録があった。一緒に歌っているときだけでも、つらいことを忘れられるように、明日からまた、勇気を振り絞って生きていけるように――。「リズムや音程にこだわるより、全力で気持ちをぶつけようと歌ったとき、会場が一つになった気がした。そのときから、おにいさんとしてのあり方も、歌い方も変わった」

 おにいさんの在籍は歴代最長の9年間に及んだ。卒業時は「だいすけロス」といわれるほど、多くの親子のよりどころになった。「僕だけでなく聴いているみんなの感情も相まって、初めてその場が幸せな空間になる」。培った哲学は、いまも胸にある。(岡田慶子)