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 東大カーリングサークルが母体の「チーム東京」のメンバーが、19日夜の平昌五輪カーリング女子・日本対スウェーデンを、藤沢五月らロコ・ソラーレ北見(LS北見)のエピソードも満載でリアルタイム解説しました。日本はソチ五輪銀メダルのスウェーデンに劇的な勝利を収めました。

その瞬間、「おお!」

 日本の勝ちは、スウェーデンのスキップの最後のショットにミスが出て転がり込んだ。チーム東京の3人からは「おお!」との声が上がった。その後、「スイーパーがライン(コース)コールばかりに集中してしまい、ウェートジャッジが甘かったのでは」「その結果、石のウェートが少し弱かったように見えた。曲がりすぎた分、スウェーデンはナンバー1を取れなかった」と冷静に振り返った。

《第10エンド》

 先攻で不利な日本。スチールするしかない。

 ハウスの中に石はひとつずつ。ナンバー1(一番中心部にある石)はスウェーデンという状況で、日本はスキップ藤沢がラストショットを放った。

 自分の赤い石に当てて、黄色をハウスの一番外側にはじき出す。ナンバー1、2は日本。ナンバー3はスウェーデン。「ここでしっかり1、2を残せたのが大きい。しかも位置が絶妙で、スウェーデンは最後にピンポイントで決めなければいけなくなった」

 スウェーデンのスキップのラストショット。「(日本の石を弾いて、自分はハウス中心部に残る)ヒットステイしかない」。強豪スウェーデンにとって、そこまでの難ショットではなかった。「でも少し左右にずれたら失敗しかねない一投だった。さっちゃんのラストショットが相手に最大限の重圧をかけられた」。スウェーデンのショットはわずかに流れ、日本は1点のスチールに成功した。

 これで日本は5勝2敗で、スウェーデンと並んで2位タイ。残る相手は英国とスイス。「あと1勝して6勝すれば、準決勝に行ける。5勝のままでもタイブレークには行けるのでは。明るい展望が開けている」

《第9エンド》

 2―4と2点を追う展開で後攻の日本。もちろん複数得点がほしい場面だ。

 「(サードの吉田)知那美ちゃん、調子いいね」。ハウス内のスウェーデンの石の裏側に回り込む「カムアラウンド」を決める。相手サードのミスショットで日本は2点を取るチャンス。藤沢がしっかり決めて、追いついた。

 さあ第10エンド。「日本はまずはセンターにガードストーンを置いて、不利な先攻で得点する展開に持ち込むしかない。氷の状態が難しいということは、後攻でも確実に得点できるとは限らないので」

《第7エンド》

 「さっちゃん(スキップの藤沢五月)笑ってる。余裕あるな」

 藤沢がブラシを使って伝えた曲がり幅のジャッジに対し、セカンド鈴木夕湖、サード吉田知那美が「そんなに曲がらないんじゃない?」と異を唱えるシーンがあった。

 藤沢は「えー、本当に?」という笑顔を見せながら、チームメート2人の判断に従い、指示を修正した。結果、このエンド、後攻の日本はわざと無得点にして、次エンドも後攻の攻撃権を得られる「ブランクエンド」にすることに成功。「今日のさっちゃんはショットの調子は決して良くないが、余裕を持って試合をコントロールできている」

藤沢のドローの精度、なぜ低い?

 ツイッター経由で新たに質問が。「藤沢さんのドロー(ショット)の精度がこの試合低いのですが、何が原因と思われますか?」

 チーム東京の岩永直樹が答えます。「藤沢さんに限らず、全体的に両チームともドローの精度が低いです。公式練習からの数日間に比べ、今日は氷が明らかに滑りにくい状態に調整されています。氷の状態がスイープでもフォローできないほど厳しいのが原因だと思います」

 また、「昨日、石の裏側を削ったそうですが、石を削ったらどの様になるのでしょうか? 大会期間中に石を削るのは、普通にあることですか?」という質問も。

 チーム東京の橋本祥太朗が答えます。「石の裏側を削るのは、氷との摩擦を増やすためです。摩擦を増やすことで石は曲がりやすくなります。そうなるとショットの選択肢の幅が広がるから、ゲームが複雑で面白くなります。大会期間中に削ることもありますが、そんなに頻繁ではないと思います」。そして、「石を削った直後の昨夜の日本男子の試合を見ると、曲がりすぎるコンディションだった。この先は推測ですが、曲がり幅を少し抑えるために、今夜は氷の温度を下げて落ち着かせた結果、重くて滑らないコンディションになっているのではないか」という。

《おやつタイム》

 第5エンド終了後の5分間のハーフタイムはおやつタイムでもある。ロコ・ソラーレ北見はイチゴ、バナナ、お菓子などを食べていた。チーム東京は、岩永直樹が味の素に勤務している関係で、「アミノバイタルの粉やゼリードリンクを摂取します」。

《前半終了。氷が重い》

 第5エンドが終わり、2―2の同点。「氷が重くて、日本もスウェーデンも石を置きたいところに置けていない」。氷が重いと伸びしろがなく、スイープで伸ばすことも難しくなるという。それだけ「投げ手のよりいっそうの正確さが求められる」。

 ハーフタイムを挟むと、氷の表面に霜が降りたりして、「氷がへたる」ことが多く、さらに氷が重くなる可能性が高いという。そんな時に大事なのは、「まずは難しいことをしない。堅実なショット選択。そして勝負を焦らないこと。丁寧に簡単なことを続け、勝負どころを待つ」ことだ。

ここで読者から質問が

 ツイッター経由で質問が来ました。「凄く初心者です。カーリングを始めるきっかけって、何でしょうか?? 観ていて、楽しいなと思ってます」

 この質問に対し、チーム東京の神田順平は「きっかけは2002年ソルトレーク五輪の日本女子の活躍をテレビで見たことでした。その翌年、東大に入学した後、地元神奈川のカーリング協会の練習に飛び込みで参加し、大学でカーリングサークルを立ち上げました。質問者さんも五輪をきっかけに、ぜひカーリングを楽しんでください」。

いい石と、よくない石

 各チーム八つの石を投げる。石の特性上「いい石とよくない石」があるという。八つの石の平均値から極端に外れて曲がったり曲がらなかったり、スピードが出たり出なかったりする石が「よくない石」だ。

 この「よくない石」を誰が投げるのかはチームによって違うが、ロコ・ソラーレ北見の場合、最年少でリードの吉田夕梨花(24)が持たされるという。「別にいじめられているわけではなく、それだけ条件が悪くてもいいショットを決められるということ」。目立たないが、リードの吉田夕の投げにも注目だ。

《静かな立ち上がり》

 試合前に各チームが2投ずつ投げ、ハウス中心からの距離が短いチームが先攻後攻を選べる「ラスト・ドロー・ショット(LSD)」に勝った日本は第1エンドは後攻。ブランクエンド(両チーム無得点)にして、第2エンドも後攻の攻撃権を取った。「立ち上がりは落ち着いていますね。氷の状態も曲がりすぎる感じでもない」

 そして「さっちゃん(スキップの藤沢五月)はリスクを取らずにミスを誘うのが上手」。まだ試合であまり使われていないラインを使わせて、ミスを誘うのがうまいという。

藤沢、超強気な女性

 東大OBでチーム東京の中心メンバー、神田順平と岩永直樹(ともに33)は、日本女子代表のロコ・ソラーレ北見のスキップ、藤沢五月(26)から叱られたことがある。

 4年前、チームが定宿にしている長野・軽井沢のペンションに遊びに来ていた藤沢に2人が「SCは強いよな」と漏らしたときのことだ。

 藤沢はこう返してきた。「モロさんたちに勝てないなんて思ったらダメですよ! 普通に勝てますよ」

 モロさんとは、平昌五輪を日本男子代表として戦っているSC軽井沢クラブのスキップ両角友佑(33)のこと。日本選手権で準優勝3回を誇るチーム東京だが、超攻撃的カーリングを掲げるSC軽井沢クの壁はまだ公式戦では一度も破れていない。

 そこで藤沢の説教である。「勝てないと思ったらダメですよ!」

 当時の藤沢は、長野・軽井沢を練習拠点とする中部電力に所属していて、東京から月2回、軽井沢に練習にくるチーム東京ともよく交流した。

 平昌五輪の開催地・韓国では「清純な美女」「女優のパク・ボヨンに似ている」など外見への関心が高まっているようだが、カーリングに関しては妥協を許さない勝負師だ。「カーリングが大好きな超強気な女性です。『モロさんに勝てますよ』なんて言える女性はたぶん日本に一人しかいない。彼女の持っている強い気持ちを、負けられないスウェーデン戦で出して欲しい」

 チーム東京は、「カーリングに関しては師匠のような存在」と認める、7歳年下の藤沢の活躍に期待を込める。(構成・平井隆介