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宇宙新時代 月へ、再び

 月や火星を目指す将来の有人探査では、宇宙飛行士の滞在期間が数カ月~数年に及ぶ可能性がある。現地で居住スペースなどを作るための土木作業や、省電力の通信手段などが必要になる。

 だが、時期が未定の探査のためだけに、新たな技術を開発して維持するのは負担が大きい。2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンは、11年後の「はやぶさ2」まで、性能向上や産業化の名目で予算を確保して維持してきた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の国中均・宇宙科学研究所副所長は「こうした仕組みでは、30年先の探査はできない」と話す。

 こうした課題を乗り越えようとJAXAは15年、「宇宙探査イノベーションハブ」を設置した。「ハブ」とは「中核」の意味。探査に必要な技術について、大学や企業から提案を募って共同で開発する。成果は、JAXAが宇宙で探査に使う一方、地上では企業がビジネスにつなげる。これまでに54件の共同研究を行い、宇宙分野に関わりがなかった企業も約50社取り込んできた。

 解体用重機の部品などを開発する、タグチ工業(岡山市)は、JAXAの炭素繊維の技術を応用したショベルカーを開発中だ。軽量化すれば、ロケットに多く積むことができ、月拠点の建設などに役立つ。

 これまでの研究で、従来の約3分の1の重さのアームを試作。一度に掘削できる土の量が多くでき、燃費の向上も期待できる。同社技術本部の岡田康弘さんは「炭素繊維は高価だが、自動車部品などで量産化が進めば、価格が低下し、製品化も検討できる」と話す。

 ソニーやソニーコンピュータサイエンス研究所は、約1ミリで光ディスクを読み取るレーザー技術を使い、4500キロ離れた衛星を結ぶ通信技術に取り組む。電波を使わないため、周波数の割り当てにとらわれず、省エネ性も期待できる。

 今年度中に、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」に取り付け、地上との通信を試す。将来は、月や火星との通信にも応用できる可能性があるという。

 国中さんは「宇宙でも使えて、地上産業化ができそうな技術開発には、何らかの壁がある。実際にできるのは、千に三つほどかもしれないが、一つでも二つでも実現させないといけない」と話している。(田中誠士)