松本清張を読むと藤井フミヤの頭の中で昭和歌謡が流れる
聞き手・新屋絵理
歌手の藤井フミヤさん(55)は、色々な映画を見たような気分になれる短編集が好きだという。松本清張の作品でおすすめの1作は、昭和30年代に発表された「地方紙を買う女」。昭和のリアルが感じられるという。年を重ねるにつれ、より作品に入り込むことができるようになってきた。
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清張さんの作品を読むと、昭和歌謡が頭の中で流れる気がします。昭和歌謡って、夜の女と男の恋愛の歌でしょ。しかも日陰の。清張さんの作品にも男女の秘め事がよく出てきて、そこが肝になっている。
「地方紙を買う女」には心中が出てきます。本の中で世間は「あ、心中か」と納得する。今はあまり聞かないけど、当時はあったんだろうな。今時使わない「そうかしら」という女性のせりふとか、日本語もきれい。想像するのは白黒からカラーになったころの銀幕スターです。
いまの50代前後って、そん…