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 セクハラなどの性被害をSNSなどで告発する「#MeToo(私も)」の動きについて、1月に本欄で5回にわたり紹介しました。朝日新聞デジタルのアンケートには、「被害に遭ったらどうすればいいのか、情報を得たい」といった声が寄せられました。もしもの時の対応や、被害者の心の傷について専門家に尋ね、声をあげることについて性被害当事者がどう見ているかを聞きました。

「私の罪」と思っていた

 アンケートに寄せられた意見や体験談の一部を紹介します。

●「私自身まだ高校生ということもあり、性被害を受けるという状況が想像しにくいです。このことを考えると不安になる一方で、どこか他人事のようにも思ってしまいます。性被害というと痴漢くらいしか思いつかないですし、どこか自分とは関係ないと考えてしまいます。このように思っている人に限って、被害を受けやすいのかもしれません。被害を受ける前に、性被害に関する情報を得たいです」(京都府・10代女性)

●「私はセクハラや痴漢、性的暴行などを受けることなく、今まで生きてきました。しかし、MeToo活動や伊藤詩織さんの事件を知って自分がこのような問題について何も勉強してこなかったことに気付きました。女である私にも起こりうることなのに、私はレイプキットのある病院がどこにあるのかも知りませんでしたし、セクハラや痴漢をされた時どのように対処したらいいのかを事前に考えておくこともしませんでした。できれば両親や先生に対処法を教えておいてほしかったと思います。私はこれから子供を授かる可能性があり、自分の子供たちをそんな無知の状態で世に出したくありません。また、こんな危険性が潜んでいる世には出せないと考えています」(福岡県・30代女性)

●「10歳ごろ、性的ないたずらをされ写真を撮られました。当時何をされたか分かりませんでしたが自分で調べました。読書が好きで分からないものは調べる癖がついていたので。性的なものがタブーとされ隠されているからこそ性被害にあったのだと理解するまでかかりましたし、けれど隠されているからこそ言ってはいけないと無言の圧力を感じたのも確かでした。正しい性知識の本もなく、あるのは男性用の雑誌ばかりで偏っており、それを見ていたら母親に不潔だと怒られさげすまれてののしられたのを覚えています。私は自分が何をされたのか調べていただけだったのに!」(京都府・30代女性)

●「具体策が重要。被害女性にケアも無く、男性警官が部署ごとに何度もレイプの様子を聞くとか、被害女性をケアする病院がごく限られており、被害者自身が出向く必要があるなど、明らかな体制の不備が指摘されており、制度・体制は早急に改善すべきだ。無理やりの性交でケガをしていたり、妊娠が出来なくなることもあるし、逆に望まない妊娠もあり得る。医療の現場は精神的ケアを含めどう対応するのか? 中世並みと国連に太鼓判を押される司法・警察は、女性を交えた改革をすべきだ。報道には、一般人の声を拾うだけでなく、先進欧米諸国と比べ日本の制度はどこがどう違うのか国民に知らせ、関係省庁・機関に対応を問いただす責務があると思う」(千葉県・60代女性)

●「付き合ってまもない頃、彼からセックスを強要された。抵抗したが力では勝てずあきらめるしかなかった。これが初体験だった。付き合っているから、配偶者だからという理由で行われる合意に基づかない性行為については問題にされることがほとんどないのではないか。『嫌なものは嫌』なのである。今振り返るとこれも『レイプ』といえると思う。ただ相手が彼もしくは配偶者だとするとその関係性だけを見て、そこに合意があったのかということが欠け落ちてしまう。関係性にとらわれてしまうことで相談しにくく、誰かに言えたとしても周りの理解も得にくい。性行為の前提として合意に基づくかということが一人ひとりの共通認識となることが重要だと思う」(海外・30代女性)

●「明確な犯罪行為までがセクハラという言葉に隠れているような気がする。痴漢、暴行、傷害、レイプなどまでセクハラと呼ぶべきではなく、それらはあるがままに表現すべきである。そうして初めて、狭義の~犯罪ではない程度の不快な行為~について話ができるだろう」(広島県・40代男性)

●「焼き鳥屋の店長に強姦(ごうかん)されました。誕生日を祝ってあげるというので行ったら店長以外誰もいない。そこで私が声をあげれなかったのは『女1人で居酒屋に入る方が悪い』と言われると思ったからです。もっと昔にレイプされたことがありましたが、当時は高校1年生で親と一緒に警察に駆け込みましたが『一緒にホテルに入った時点で同意』やら『訴えるとお金かかるよ』と言われたことを思い出したので、この時も訴えられなかった」(大阪府・30代女性)

●「小3のとき性被害にあった。けれど私はそれを、私にも落ち度があったからで、『被害』というよりは『私の罪』だと思って誰にも言えなかった。大人になり強姦(ごうかん)された人が逆に責められるドラマを見て『ひどい』と憤慨したし、性犯罪は加害者が100パーセント悪いと思っていたが、自身の経験は相変わらず自分が悪かったとの思い込みから抜け出せてなかった。が、#MeTooの一連の動きを見ていて初めて『私は悪くない、私は被害者だったのだ』と気づいた。声を上げる上げない以前の私のような境遇の人(とくに子供)もたくさんいると思う。この動きがその人たちを救うきっかけになると思う」(福岡県・30代女性)

●「被害を受けてもすぐに告発しない被害者を非難する風潮もある。『すぐに言えばいいじゃないか、証拠も出やすいのに』と。#MeTooは、『声を上げる被害者』を奨励するあまり、そうではない被害者を暗に責め立てているように感じる。声を上げられない被害者は、同じ性被害者からも勇気がないと見なされるのではないだろうか」(埼玉県・20代女性)

●「#MeTooによって、声をあげやすくなったものの、それ以上傷つかないためにあえて声をあげない人も多いと思います。また、#MeTooムーブメントやその他女性たちの活動を批判している人たちの中にも、きっと我慢をしてきたり、セクハラと自身の中では認識できないけれどセクハラを受けた人もいると思います。批判している人の身近な人も、被害にあっているかもしれない。そこまで想像力を持って欲しいと願います」(東京都・20代女性)

被害を受けたら 早めに相談

 性被害に遭った時にどのような行動を取ればいいのか、警察庁の犯罪被害者支援室に聞きました。

 自宅内外にかかわらず、110番すれば警察官が来てくれます。性被害の相談専門の番号「#8103」もあります。

 着替えることで洋服から証拠物が落ちる可能性があるため、できれば着替えず、シャワーも浴びずにいてほしいそうです。着替えたりシャワーを浴びたりした場合も、被害時の洋服は洗濯せず、個別にポリ袋に入れて保管します。

 警察では性被害に詳しい産婦人科を紹介してもらえます。警察官が同行してくれることもあるそうです。産婦人科では性感染症の検査をしたり、緊急避妊ピルを処方したりしてもらえ、費用は公費負担制度があります。また、警察のカウンセリングを受けたり、外部のカウンセリングを紹介してもらえたりもできます。これらの費用も公費で負担されます。

 性暴力には睡眠薬や抗不安薬などが用いられることも。これらの薬物は、摂取後数時間から数日間で尿とともに流れてしまいます。その前に尿や血液を採取するためにも早めに警察へ行くほか、薬物を入れられたと思われる飲み物や飲食物、食器が手元にある場合は保管しておくとその後の捜査に役立つそうです。

 担当者は「ワンストップ支援センターや病院とも連携し、通常の生活に戻れる手助けをしています。『相手を処罰したいわけではない』と思っていたとしても、どこかに相談してほしい」と話しています。当初は自分を責めていた被害者が、話をするうちに「私が悪かったわけではない」と思えるようになることもあるそうです。(山本奈朱香

言い損にしない支援を

 #MeTooの動きを性被害当事者はどう見ているのでしょうか。被害を打ち明けられない人への理解や、被害者を支援する態勢の整備を求める意見が聞かれました。

 「いい流れだなと思う半面、ブームのような流れに巻き込まれていく怖さを感じました」。そう語るのは、父と兄から性虐待を受けた経験がある都内在住の女性(49)です。「性被害の中でも、近親者からの性虐待は特に声を上げにくい。どうしても声が上げられない人がいることを知ってほしい」と話します。

 女性はこれまで、子どもの虐待に関する学会などで、自身の経験を社会に伝えてきました。その際は事前に何度も家族や主治医と話し合い、気持ちを整理したと言います。「心の傷が癒えきっていない時に無理やりかさぶたをはがすと、傷はさらに深まってしまう。周囲に公表しないことも、自分を守る大切な選択。自分はどうしたいのか、立ち止まって考えてみることも必要です」

 性暴力被害者や支援者でつくる一般社団法人「Spring」(東京)代表理事の山本潤さん(44)は「日本では、被害者が被害を伝えることの重みが伝わっていない。被害当事者じゃない人にもっと考えてほしい」と訴えます。

 山本さんは10代で父親からの性暴力を受け、2010年から講演などで自らの被害体験を伝えています。しかし、話すことで心の傷が刺激されるうえ、「うそでは?」などと心ない反応が返ってくることもあるそうです。「話すことは苦しい。それでも語るのは、理不尽な状況を変えたいと強く望んでいるからです」

 一方で、いまの日本は告発した被害者を支援する環境が整っておらず、「被害者が告発しても利益にならない。言い損になってしまう」とみています。「必要なのは、被害者を支える支援態勢や性暴力を処罰する法規制の整備、そして暴力を容認しない文化をつくることです」

 16歳の時に初対面の男から性被害に遭い、現在は被害者支援に携わる都内在住の50代男性は「女性をはじめ、男性や性的少数者、子どもも性暴力の標的になる。『#MeToo』は、社会に多くの被害者がいて、つながれるということを実感させてくれた」と話します。

 男性は、日本における性暴力への認識や支援は、欧米と比べてまだまだ遅れていると感じています。ただ、昨年は刑法が改正されるなど、「確実に変わってきている」とも。「批判にさらされても、『性暴力は許さない』という意識は必ず社会に定着していく。あらゆる性別や年齢の人が力を合わせ、みんなで社会を変えていきたい」と話します。(塩入彩)

うつ病や自殺企図 割合高く

 目白大学で講師を務め、被害者支援都民センター(東京)で被害者の心理的ケアにも携わる臨床心理士の斎藤梓さんに話を聞きました。

     ◇

 性暴力は自分の意思や尊厳をふみにじられる行為です。被害後に「自分が悪かった」「自分はダメな人間だ」と思ってしまう場合も多く、トラウマによる心身の反応やPTSD、うつ病の発症、自殺企図などが発生する割合が高まります。さらに出来事について自分を責めるため、人に被害を打ち明けられるようになるまで数年、数十年かかる人もいます。

 身近な人から被害を打ち明けられたら、まずは「よく話してくれたね」「あなたは悪くないよ」とねぎらいの言葉をかけてください。「気をつけろって言ったのに」というような言葉は二次被害につながります。日常で防犯に気をつけることは大切なことかもしれませんが、被害に遭ったのは被害者の責任ではない。加害者が悪いのです。

 「抵抗すればレイプは防げる」という考えも間違いです。恐怖で体が凍り付いて声が出なくなるのは、危機が迫った時の適応的な行動です。抵抗したら殺されていたかもしれないのです。

 被害者は被害後、性的な行為が嫌になる場合もあれば、不特定多数の人と性行為をするなど問題行動を示す場合もあります。これは「汚れた自分はどうでもいい」と思い、自暴自棄になってしまったりするから。イライラするなど性格が変わったように見えることもありますが、被害の影響だと理解してください。周囲の人がどう支えればいいのか困った時には、周囲の人自身も、相談することをおすすめします。(聞き手・山本奈朱香)

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