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又吉直樹のいつか見る風景

 東京・上野の雑居ビルにある、その部屋は、人造人間の完成を夢想しながら、謎の失踪をとげた天才科学者の研究室のようでもありました。いちぶの隙もなく精巧につくりあげられた人型のものが、うつろな瞳を見開いたまま、魂を吹きこまれる順番を待ちわびている風情でベッドに横たわっていたのです。又吉直樹さんは、虚実を隔てる皮膜を見失わせる罠(わな)にはまったように、しばしそこで、言葉を失っていました。

     ◇

 幼い頃、近所に住む同世代の子供達(たち)と一緒に遊ぶのが苦手だった。

 彼等(ら)の遊び方に、まったくついていけなかったからだ。女の子は、赤ちゃんの人形を本当の赤ちゃんのように大切に扱い、お母さんの口調で優しく話し掛けていたし、男の子は人形同士を自分で動かしながら、「ビシッ!」、「ズシッ!」、「ウォー!」などと音をつけて真剣に戦わせていた。

 一緒に遊びたいという気持ちはあるのだが、「こいつらは、なにをしているんだろう?」という冷めた気持ちを消すことが出来なかった。

 彼等の遊びを近くで黙って見て…

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