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 川崎市の有料老人ホームで2014年、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、殺人罪に問われた元職員の今井隼人被告(25)の裁判員裁判が1日、横浜地裁であった。検察側は論告で、「自己保身のため不合理な弁解に終始し、更生への期待は皆無」と指摘し、死刑を求刑した。無罪を主張している弁護側が午後に最終弁論をして、結審する予定だ。

 犯行を証明する物証が無い中、最大の争点は今井被告が16年2月の逮捕前後に、犯行を認めた自白の信用性だ。審理では、今井被告が逮捕前の任意聴取で「僕が殺そうと思って殺したのが事実です」と話したり、逮捕直後に3人の殺害を認めたうえで動機について「煩わしかった」と説明したりする様子を撮影した動画が再生された。検察側は論告で自白などを踏まえて「被告人以外が犯人である可能性は極めて低い」と述べた。

 今井被告は逮捕された数日後、黙秘に転じ、被告人質問では「何もやっていない」と述べた。弁護側は取り調べで警察官から圧力や誘導があったと主張。自白については「取り調べから逃れるため、想像と推測で話した」としている。(古田寛也、豊岡亮)

川崎市の老人ホームの連続転落死事件の主な争点

①事件性

【検察側】高齢な3人はいずれも自力での歩行が難しく、高さ約115センチのベランダの柵を自力で乗り越えることは極めて困難

【弁護側】3人は普段から自力で歩いたり、徘徊(はいかい)したりしており、ベランダの柵を自力で乗り越えることは可能。警察も当初は事故として処理していた

②犯人性

【検察側】3件の事件があった全ての日に夜勤として勤務していたのは今井被告のみ。2、3件目の事件の「犯行予告」をしていた

【弁護側】犯行の様子を映した防犯カメラや目撃証言はない

③自白の信用性

【検察側】取り調べを担当した警察官から圧力や誘導は無かった

【弁護側】長時間の取り調べや警察官からの圧力、誘導によって虚偽の自白をした

④責任能力

【検察側】自閉症スペクトラム障害だが、事件当時は正常な心理状態だった

【弁護側】自閉症スペクトラム障害で、軽度知的障害もある。犯人だったとしても心神喪失か心神耗弱だった