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(31日、選抜高校野球 花巻東1―0彦根東)

 花巻東を窮地から救ったのは、2番手投手の伊藤翼(3年)だった。127球を投げ、10回無失点の力投でチームを勝利に導いた。

 記念すべき甲子園初登板は突然やってきた。試合前にコーチから「この試合は新田と2人で」と言われていたというが、新田が先頭打者に頭部への死球を与えるなどわずか6球で降板。2番打者へのカウント2ボールからマウンドに上がった。「すぐだったので、(投球練習も)10球ぐらいしかしていない」状態だった。

 ただ、焦りはなかった。「テンポ良く投げて、打たせてとろう」。右横手から120キロ台の速球を中心に、シュート、スライダー、チェンジアップと、球速が近い4球種をストライクゾーンの内外に散らし、的を絞らせない。「いけるところまでいこう」と、走者を背負っても粘り続けた。

 最大のピンチは九回、内野安打と犠打などで2死一、三塁を迎えた。点をやりたくない気持ちで緊張してもおかしくない状況だが、「自分らが後攻だったので、点をとられても裏で返してくれると言われていた」。仲間を信じ、ストライクを投げ続けると、2球目の125キロのシュートで三邪飛に打ち取った。

 彦根東の増居相手に九回まで無安打無得点に抑えられ、嫌な雰囲気も漂ったが、「十回をリズムよく抑えたら点をとれると思っていた」と冷静さも失わない。言葉通り延長十回を3人で退けると、裏の攻撃でサヨナラ勝ちが待っていた。

 冷静沈着に甲子園初登板をこなした伊藤だが、もともとは三塁手。2月に左足首の外側を骨折したといい、「これまでの公式戦最長は2イニングです」と照れた。骨折後は練習が制限されたが、体幹トレーニングなどできることに取り組み、大舞台に備えてきた。

 何よりも報道陣を驚かせたのが、その強心臓ぶりだ。緊急登板に、相手投手・増居は九回まで無安打無得点投球。1球ごとに3万7千人の大観衆がざわつく雰囲気でも、自分を見失うことはなかったという。真っ赤に染まった相手応援団や大声援も「テレビから見ているみたい」と振り返り、「甲子園は楽しかったです」と無邪気に笑っていた。(遠田寛生)

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