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 岐阜市内の橋から飛び降りて自殺しようとした女性を助けたとして、岐阜中署は同市雲井町のダンスインストラクター大谷光葉さん(31)に感謝状を贈った。「助けなきゃという一心だった」と、当時の緊迫した様子を振り返った。

 気温が0度まで冷え込んだ1月23日午後9時過ぎ、大谷さんは市内でダンスを教える仕事を終え、帰宅のため軽乗用車を走らせていた。長良川に架かる千鳥橋を北に向かって渡る途中、視界の端に何かが見えた。

 いったんはそのまま通り過ぎたものの、「人だったらどうしよう」とUターンして、橋をもう一度通った。すると、中年の女性が片足を橋の欄干にかけているのが見えた。「これは危ない」。大谷さんはすばやく110番通報。道路にうずくまった女性を見て、「車にはねられてしまうかも」と、守るように自分の車をななめに止め、ハザードランプを点灯させた。

 その後、警察官が来るまでの約10分間、大谷さんは車の窓から女性に声をかけ続けた。強い口調で「だめ」と言うと、余計に女性を追い詰めてしまうと思い、「どうしたの? 何かあった?」と日常会話を心がけた。

 女性は何度も欄干に足をかけて、飛び降りようと体重を傾けた。「ちょっと待って! 私で良かったら話聞くよ」。女性は泣くばかりだったが、大谷さんは沈黙しないよう、警察官が到着して女性を確保するまで懸命に言葉をかけた。

 数年前から小学生たちにダンスを教えるようになったという大谷さん。「子どもたちに対して、優しい言い方を心がけていたのが役に立ったのかな」と振り返る。今月1日の感謝状の贈呈式で同署の森泉署長は「勇気をもって声をかけてくれた。的確で勇敢な行動に心から感謝したい」とたたえた。

 橋から飛び降りようとしていた女性は、市内に住む50代の女性だったといい、間もなくして家族が駆けつけた。

 3月は「自殺対策強化月間」として厚生労働省が自殺防止に力を注いでいる。大谷さんは「一人の命が助かって良かった。今はつらいかもしれないが、これから先、忘れられる時がくるかもしれない」と話した。(松浦祥子)