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患者を生きる・10代の母(記者の一言)

 「妊娠して、(人生が)いい方向に変わったねと周りの人に言われるんです」

ちょっと照れ笑いのような表情に、私は少しだけ「やっぱり」と思いました。

 今回、取材に協力してくれた女性は、化粧っ気のない可愛らしい18歳。言葉を探す話し方から、「周りの人の顔色をうかがいながら育ってきた」という子ども時代の暮らしぶりがうかがわれます。相手の表情がわからないから、電話が苦手。子どもを産んだことで健診や予防接種の予約など必要に迫られて、やっと電話をかけられるようになったと打ち明けてくれました。

 14歳で子どもを授かったという「予期せぬ事態」に導かれて、まつしま病院の助産師、幸崎若菜さんや区の保健師ら、「信頼できる大人」に出会えたことも彼女と夫の人生を大きく変えました。「しっかり話を聞いて、悪いことは悪いと言ってくれるから、幸崎さんと保健師さんは信頼できる」と、2人は口をそろえます。ときには2人に厳しく苦言を呈しながらも、幸崎さんらは若いカップルの可能性を信じ、親や役所、学校との話し合いや手続きを支えました。裏を返せば、2人はそれまで、周りの大人を心から頼ることができないまま不安定な思春期を過ごしてきたということです。

 様々な事情から親や先生を頼ることができない若い母親にとっては、妊娠して訪れる病院が初めての「信頼できる大人」との出会いの場になるかもしれないということを、彼女たちに教わりました。

 2人が味わった苦労は原稿に書ききれなかったことだけでもたくさんありますし、これからもたくさんの厳しい現実に直面するでしょう。10代での妊娠出産を礼賛しようとは思いません。ですが、女性の体験を「幸運な一例」に終わらせないことが重要だと思います。せっかく赤ちゃんが生まれてくるのなら、育てていこうと覚悟を決めた家族とともに安定した暮らしを営んでいけるように、支援の手がさしのべられるべきです。最近の統計によれば、多い年で60人超、少ない年でも約40人の赤ちゃんが14歳以下のお母さんのもとに生まれています。虐待や貧困の連鎖を止めるという観点からも支援は重要です。

 「若いからって理由だけで、育てられないからおろせというのは違う」

 ポツリと夫がこぼした言葉はくしくも、長く若年出産を研究してきた首都大学東京の安達久美子教授の考えと一致します。適切な支援が、幼い親たちを成長させると信じる安達さんは「若いからダメと周囲が決めてかかれば、親たちは心を閉ざし、支援の機会もそこで途切れてしまう」と訴えます。

 最近、女性は保健師から、「お母さんの貫禄がついてきたね」と声をかけれられたと喜んでいました。監視されているように思えていた子ども家庭支援センターも、担当者が変わったこともあり、彼女たちの子育てを見守ってくれる味方のように思えるそうです。新しく出会った人を味方につけ、上手に周りを頼れるようになっている女性の笑顔が頼もしく見えました。

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<アピタル:患者を生きる・妊娠・出産>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(冨岡史穂)