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 日本勢の13個のメダルラッシュにわいた平昌(ピョンチャン)冬季五輪の陰で、再出発した選手がいる。陸上女子の短距離選手からボブスレーとの「二刀流」に挑み、五輪出場を逃した君嶋愛梨沙(ありさ、22)=日体大。

 米国人の父と、日本人の母を持つ彼女は、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟のタレント発掘テストで見いだされ、昨季からボブスレーに挑戦。わずか4カ月で押切麻李亜(まりあ、23)=ぷらう=と組んだ世界選手権で日本勢過去最高の7位に入った。

 だが、今冬はW杯開幕戦で転倒したことなどから波に乗れなかった。足の甲をけがして、本来のダッシュ力を出せない。結局、ボブスレーの日本勢は五輪に1人も出られず、「すべてがうまくかみ合わず、悔しかった」。

 一時は世界を驚かすのではと期待されながら、五輪の舞台にすら立てない。さぞかし落ち込んでいるのだろうと思ったら、違った。今度は1人で滑れるスケルトンに試乗していたのだ。まだ本格的に挑戦するとは決めていないというが、そり競技にはまっていた。来季から長野市のそり競技施設「スパイラル」は冬季に使えなくなるが、それでも続けるという。

 平昌のそり競技で世界を驚かしたのは韓国だった。コースを知り尽くす地の利を生かし、スケルトン男子の金メダル、ボブスレー男子4人乗りの銀メダルは、ともにアジア初の快挙。競技経験がなくても運動能力の高い選手を発掘して集中強化する「お手本」となった。

 君嶋にとって、ボブスレー挑戦はスプリンターとしての復活につながった。発掘テストを受けたのは陸上の成績が伸び悩んでいた時。陸上が限界だから勧められたのではという、割り切れなさが胸に残る。だが、そりを押し続けた間は陸上の練習がまともにできなかったのに、昨年は100メートルで中学時代の自己最高を塗り替え、関東学生対校選手権では優勝を果たした。

 4月からは日体大大学院に進み、改めて「二刀流」の夢を追い続ける。日本勢でこれまで夏冬の両五輪に出たのはスピードスケートと自転車の橋本聖子、陸上短距離からボブスレーに挑んだ青戸慎司ら4人いる。「夏冬の両五輪出場が目標なのは変わらない。二刀流はあきらめない」。挫折をバネに、チャレンジ精神は尽きない。(笠井正基)