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映像作家:向井啓太さん(26)

 第1作「チョコレートケーキと法隆寺」は、夕暮れの空に響く奈良・法隆寺の鐘の音から始まり、自身の淡々としたナレーションがかぶる。「子どものころ、一日の最後になるその音は僕を不安にした。早く帰らなければとせき立てた」

 5歳から7年間、弟妹と奈良県の児童養護施設で育った。様々な理由で来た友や逆らいがたい上級生。門限午後6時、消灯午後9時の繰り返し。毎月の誕生会で出るチョコレートケーキは「ぬめっとしたバタークリームと、ぱさぱさのスポンジ」だった。

 慶応大で映像制作を学んでいた頃。18歳で施設を離れた同い年の友人たちを追おうと、成人式での再会からカメラを回した。父が病死し、母は精神を病んだという告白の手紙。大人数の中で育ったせいか、仕事にも通えないほど、一人暮らしの孤独にさいなまれる女性。推薦入学した大学から姿を消した男性。2年かけて撮った100時間の映像には深い苦悩が詰まっている。

 東京や奈良の映画祭で評価され…

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