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 人類は、己の体をどう理解してきたのか。そんな人体研究の歩みと最新成果を紹介する特別展「人体」(朝日新聞社など主催)が、東京・上野の国立科学博物館で開かれている。見どころをいくつか紹介する。(企画事業本部・曺喜郁)

 特別展を監修した篠田謙一副館長(分子人類学)は、「来場者には、科学の進化とシンクロした人体研究史と、現在の最先端の成果を見ていただいたうえで、人体理解は将来どうなるのか考えてもらえれば」と特別展の狙いを話す。

酒が強い縄文女性「船泊(ふなどまり)23号」

 展示の順番では最後のコーナーになるが、篠田副館長の研究成果である「ゲノム解析による縄文人の復顔」から紹介する。

 北海道・船泊遺跡から出土した「船泊23号人骨」をもとに顔を復元したが、肌のシミや髪の縮れ方など、かなりリアルだ。しっかりした根拠があってのことという。下あごの右第一大臼歯から抽出したDNAから遺伝子情報を決定。女性であることがわかった。ほかに、骨格では分からないような、見た目に関する多くの情報が得られた。

 シミのリスクがある▽肌の色は濃い▽毛髪は細く、縮れている▽血液型はA型▽鼻の高さは中程度――。虹彩(こうさい)に関しては「茶色または黒色」「茶色」の両方の遺伝子を持つ。さらに、両親が近い血縁関係にあった▽耳あかは湿型▽酒に強い、といったことまで分かるという。

 このリアルな復顔像は、遺伝子研究という最新の人体理解の一つが、派生的に縄文期と現代との隔たりを一挙に縮めた証しともいえる。多分野で進む研究によって、私たちは今後、どんな知見を手にするのだろうか。確かに、来場者を新たな謎と期待に引き込むような展覧会だと思う。

人体探究の歴史といま

 特別展の入り口に戻る。

 ローマ時代に定着した不確かな解剖学を見直す動きがルネサンス期に始まる。レオナルド・ダビンチが観察の結果と思索を残した「解剖手稿」。観察したままを描いたベサリウスの解剖図譜「ファブリカ」初版本(1543年)。展示された貴重な資料は、人体構造への理解が急速に深まる様子を示す。

 解剖学の成果はやがて、ろうでつくったワックスモデル、紙粘土製の「キンストレーキ」といった精密な模型に結実する。ミクロの世界の観察を可能にした顕微鏡の進化も紹介している。

 現代の人体理解を示すコーナーでは、動物の臓器の標本も展示されている。人体研究には、ほかの動物との比較も欠かせない。例えば、魚類から哺乳類に進化する過程で、腎臓の機能や形がどう変化するのかを調べることで、腎臓とは何か、わかってくるという。ゾウやキリン、ネズミ、ギンザケ、オオサンショウウオなどの標本も展示されている。

「こじるり」が驚いた

 音声ガイドのナビゲーターを務めたのは人気タレントの小島瑠璃子さん。展示が完成する前の3月初旬にナレーションを収録した。台本を読んだ小島さんが「絶対見たい」と挙げたのは、「江戸時代の人骨に見るヒトの成長」。上野の不忍池にほど近い、池之端七軒町遺跡で出土した子どもの全身骨格だ。

 出生前後、1歳半、3、4、5、6、10、15歳で亡くなった子どもたちのほぼ全身の骨が並ぶ。胎児の骨は軟骨だが、それが石灰化して硬い骨として成長していく様子が見てとれる。録音スタジオで小島さんは「衝撃的。だけど、すごく見たいですね。気になる」と話した。

Nスペ「人体」と連動も

 展覧会は、NHKスペシャルのシリーズとして放送中の「人体」と連動したものでもある。番組は、最新成果による新しい人体観で貫かれている。脳が全身に指令を出すだけではなく、臓器同士が脳を介さずにコミュニケーションを取ることもあるという見方だ。

 そうした臓器間のやりとりを擬人化して立体的に示す「ネットワークシンフォニー」という展示もある。

 例えば、心臓が「疲れた。しんどい」と言って、あるホルモンを放出する。腎臓が受け取ると、尿を増やして血液量を減らし、血圧を下げて心臓を楽にする。血管が受け取ると、血管壁の傷を補修して血流を良くし、心臓の負担を減らす。

 展示では、こうしたやりとりが間断なく行われており、体内は相当にぎやからしいとわかる。

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 特別展は6月17日まで。月曜休館(3月26日、4月2・30日、6月11日は開館)。時間は午前9時~午後5時(午後8時までの夜間開館は金・土曜と、4月29・30日、5月3日に実施。5月1・2・6日は午後6時まで)。入場料は一般・大学生1600円、小中高校生600円。金・土曜午後5時以降、2人同時に入場する場合はペア得ナイト券(2枚2千円、当日券のみ)がある。問い合わせはハローダイヤル(03・5777・8600)。詳しくは公式サイト(http://jintai2018.jp/別ウインドウで開きます)。