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 2011年に焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」でユッケを食べた客181人が食中毒を発症し、5人が死亡した事件で、富山県の遺族ら9人が店の運営会社「フーズ・フォーラス」(東京、特別清算中)と当時の社長らに約2億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。鈴木尚久裁判長は、社長らの賠償責任は認めず、同社のみに約1億7千万円の支払いを命じた。

 裁判で同社は賠償責任を認めており、社長と店長に責任があるかが焦点だった。鈴木裁判長は事件当時、生肉の提供が禁じられていなかったことや、肉の表面を削り取る国の衛生基準が周知されていなかったことに着目。社長について「国の基準に沿うよう徹底していなくても重過失があったとは言えない」と判断した。店長も「社のマニュアルに従ったに過ぎない」として請求を棄却した。

 原告で、次男(当時14)を亡くした自営業久保秀智さん(55)=富山県小矢部市=は判決後、「社長らの責任が認められず残念」と話した。食中毒で家族を失うような事件を二度と起こしてはならない、との思いでこの日を迎えた。「事件は今でも昨日のことのよう。遺族になって初めて分かった。遺族ってなんてつらいんだ、と」

 この事件では、11年4月、富山、福井、石川、神奈川各県の店舗で食中毒が発生し、死者5人を含む181人が発症した。事件後、国は飲食店での豚の肉・内臓の生食用の販売などを禁じた。(後藤遼太、高億翔)

遺族「被害者って、守られていないんだな」

 原告の一人、小西政弘さん(54)=富山県砺波市=は事件で妻(当時43)と義母(同70)を亡くし、長女と長男も一時重体になった。業務上過失致死傷容疑で書類送検された焼き肉チェーン店の運営会社の元社長らは2016年、不起訴処分(嫌疑不十分)に。刑事裁判が行われないなら民事の法廷で誰の責任かをはっきりさせたい、という思いはかなわなかった。

 昨年12月の口頭弁論。元社長は「卸元の肉の衛生管理が良いものではない」と事件前に社員から聞いていたと証言し、謝罪した。一方、小西さんたちが訪れた店の元店長は「汚染された肉が入っていることは想定していない」と述べた。

 13日の判決は元社長らの過失は認めなかった。過失があったとされた会社は特別清算手続き中で、賠償金が支払われる見込みもない。「遺族の苦しみも悲しみも踏まえた裁判だと思っていたが、被害者って守られていないんだなと感じました」と話した。

 

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