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患者を生きる・熊本地震(記者の一言)

 地震などの災害が発生した時には、多くの人が治療やケアを必要とします。だが、医療機関自体が被災して十分な医療が提供できないことが少なくありません。今回の熊本地震の被災者に取材し、災害医療の整備はまだ途上にあることを強く感じました。

 23年前の阪神淡路大震災では、発生直後に通常の医療が被災者に提供できていたら500人の命が救えたという試算があります。そのような教訓から、災害が発生して48時間以内に、現場に救急医や看護師が入って治療活動できるよう、各都道府県の災害拠点病院を中心に災害派遣医療チーム(DMAT)が整備されてきました。

 その後も、災害医療チームづくりは、さまざまな組織で広がっています。7年前の東日本大震災では、日本医師会が以前から準備していた災害医療チームが初めて被災地に派遣されました。また、被災者の心のケアの重要さも認識され、被災者の心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の予防などを支援する「災害派遣精神医療チーム」(DPAT)の整備も取り組まれました。

 熊本地震が発生した2年前、災害時に弱者となる妊産婦や新生児、小児への対応を調整する専門家「災害時小児周産期リエゾン」の育成が厚生労働省の事業として整備されている最中でした。

 地震では、多くの出産施設が被災して機能がまひしました。小さい子ども連れや、妊婦が一般の避難所では過ごしにくいため、車中泊をする例も目立ちました。妊婦調査では半数が車中泊を経験していたという報告もあります。改めて、妊婦の安全を確保する大切さを示すことになりました。

 地震や火山噴火など災害大国の日本。豪雨や台風の被害、原発事故との複合災害の心配もあります。これまで起きた災害で得た教訓をもとに進化し続けてきた災害医療体制ですが、災害弱者への対策の充実を一層進めていく必要があると改めて感じています。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・妊娠出産>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(服部尚)

服部尚

服部尚(はっとり・ひさし) 朝日新聞記者

1991年入社。福井支局をふり出しに、東京や大阪の科学医療部で長く勤務。原発、エネルギー、環境、医療、医学分野を担当。東日本大震災時は科学医療部デスク。編集委員を経て、現在は科学医療部記者。