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 川崎市の有料老人ホームで2014年、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、殺人罪に問われた元職員、今井隼人被告(25)への判決が22日、横浜地裁で言い渡される。検察側は死刑を求刑する一方、弁護側は無罪を主張。犯行の物証がない中、被告が自供した様子を撮影した録音・録画を裁判員らがどう判断するかが焦点だ。

 被告の起訴内容は、「Sアミーユ川崎幸町」に勤務していた14年11~12月、87歳の男性と、86歳、96歳の女性(年齢はいずれも当時)を施設のベランダから投げ落としたというもの。

 被告は16年2月7日、神奈川県警による任意の事情聴取に「入所者から頼まれて殺した」と供述。同月15日になって「僕が殺そうと思って殺したのが事実です」と語ったことから、殺人容疑で逮捕された。

 法廷では、こうした逮捕前後に犯行を認めていた様子や、逮捕後の同月19日になって横浜地検の取り調べで「公判で本当のことを話す」と黙秘を始めた様子などの動画が流された。

 被告人質問で被告は、殺害を認める前に警察官から圧力があったと主張。「何回同じ話をしてもダメだ。15日には隠していることを全部言うのが約束だ」などと警察官から言われたと話した。被告は「『殺したと言え』と言われていると感じた。あきらめの気持ちが一番強かった」「勤務経験と警察官の出すヒントをもとに推測と想像で犯行の様子を話した」などと弁護側の質問に答えた。

 一方で、逮捕後も継続的に面会に来ていた母親に対して一度も殺害を否認しなかった理由を検察側から問われた被告は、「母親は自分がやったと信じていたので、事件について話をするつもりは当初からなかった」などと話した。

 結審前に裁判長から最後に言いたいことを聞かれると、「うその自白はしましたが、この法廷では真実しか話していません。私は本当に何もやっていません」と語った。

 自白の信用性のほか、弁護側は事件ではなく事故だった可能性や、被告の犯行が立証できていないことなども主張して争っている。(古田寛也)

法廷で再生された動画の主なやり取り

《2016年2月15日の神奈川県警による任意の事情聴取》

 ――本当のことを全部話せるか。

 被告「はい」

 ――これから話すの。

 「僕が殺そうと思って殺したのが事実です」

 ――なんで隠してたの。

 「本当に申し訳ないが、勇気がなかった。殺人鬼のようなことをしているのは分かっていたので」

     ◇

《県警による逮捕後の同年2月18日の取り調べ》

 「自分が話してきたことは、自分の中で正直に話したと思っている一方で、推測で当時のことを話している部分もあるのかなって」

 ――じゃあやってないのか。

 「その事実の部分に関しては全くうそをつくところではないです」

 ――事実ってどこ。

 「3人をベランダから転落死させた」

     ◇

《同年2月19日の横浜地検による取り調べ》

 「公判で自分の生の声で、本当のことを話すと決めたので、黙秘します」