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(16日、平昌パラリンピック・スノーボード男子バンクドスラローム下肢障害)

 1本目は50秒17、2本目は49秒61、そして3本目は48秒68。「挑戦して全部のランで(タイムを)更新できた。最高の気分です」。初出場のパラリンピックで金メダル。男子バンクドスラローム下肢障害の成田緑夢(ぐりむ)(近畿医療専門学校)は晴れやかな笑顔だった。

 真骨頂は危険な勝負に出た3本目。コース前半にある難しいバンク(傾斜のついたカーブ)の滑り方を変えた。慎重な滑走から一転、思い切って「上から切る」ように滑った。ほぼ真下に落ちる最短距離のラインだ。転倒の危険もあった。「守ってもしょうがない」。この挑戦で約1秒短縮。2本目までのタイムだったら3位に落ちていた。

 通常なら本数を重ねるほどコースが荒れてタイムが落ちる。だが、この日はライバルたちも2本目に記録を伸ばしていた。2本目までトップを守った成田には嫌な展開だったが、慌てなかった。「(前に滑った)上肢障害の部の選手たちは、ほぼ全員が3本目にタイムを上げた。自分が完璧に滑れなければ、巻き返されると理解していた」

 1本目で2位に0秒28差をつけた時も、2本目に入る前に両足の位置を3センチ後ろへずらした。小回りが利かなくなり、硬い雪面では危険が増す。だが、板の滑りは良くなる。「ギアを変えたかった」。安全策を捨ててスピードを追求した。

 よく口にする好きな言葉がある。「目の前の一歩を全力で」。その思いを体現する滑走を見せた。「アスリート成田緑夢に、よくやったと言ってやりたい」(波戸健一)

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〈バンクドスラローム〉 スノーボードの種目で、今大会から採用された。旗門が設置されたコースを1人で滑り、滑走タイムを競う。ほとんどの旗門には傾斜のついたカーブ(バンク)がつくられ、選手の回転(スラローム)を容易にしている。選手は3回ずつ滑り、最速タイムで順位が決まる。