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 地味な王者が「あの騒動」で一転して注目を集めている。18日に神戸ポートピアホテルで開かれるボクシングのダブル世界戦で、世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級王者の山中竜也(りゅうや)(22=真正)が初防衛戦に臨む。同姓で名王者だった山中慎介(35=帝拳)は1日に敗れ、引退を表明。竜也は勝って「じゃない方」を返上できるか。

 今回は1日に山中慎が敗れてから初の国内世界戦になる。山中慎は王座返り咲きを狙いルイス・ネリと再戦したが、ネリが前日計量で体重超過を犯し騒動になった。山中竜の相手はネリと同じメキシコ人の同級4位モイセス・カジェロス。二重の意味で注目を集めることになってしまった。

高校進学よりボクシングで家族を支える道選んだ

 世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王座を12連続防衛し、強打のサウスポーとして「神の左」と呼ばれた慎介に対し、竜也は地味でまだ知名度も低い。大阪府堺市出身。小学5年の時に両親が離婚し、母の理恵さん(46)が女手一つで6人きょうだいを育てた。長男の竜也は高校に進学せず、ボクシングで大成して家族を支える道を選んだ。大学までアマチュアで活躍してからプロに転向するトップ選手が増えている最近では、それだけで珍しい経歴といえる。

 6年前にデビュー。5戦目で1回KO負けするなど新人王にもなれなかったが、コツコツ努力して2年前に東洋太平洋王者に。昨年8月、前王者の福原辰弥(28=本田フィットネス)に福原の地元の熊本で挑戦し、3―0で判定勝ち。母やきょうだいが見守る前で念願の世界のベルトを巻いた。

 最軽量のミニマム級は制限体重47・63キロ。主要4団体の世界王者は、山中竜、京口紘人(24=ワタナベ)と、タイの選手が2人。選手がアジアに偏り、防衛回数を重ねなければ評価が上がらない階級だ。山中竜は16日の調印式後、「僕はまだ何も成し遂げてない。勝ち続けないといけないと思っています」と語った。

勝ってナガシマスパーランドに行きたい

 ささやかな目標は、勝って家族で三重県桑名市の遊園地「ナガシマスパーランド」に旅行に行くこと。中学生の頃に一度、行ったことがあり、家族の楽しい思い出の一つになっている。「今回も、みんな応援に来てくれます。お母さんは、緊張しているとは思いますけど。必ず勝ちます」。謙虚で控えめな男が、歯切れ良く勝利宣言した。(伊藤雅哉