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(17日、大相撲春場所7日目)

 野球でいえば、直球一本の速球派投手といったところ。突き押し以外にない玉鷲が、自分より45キロも重く過去1勝5敗の逸ノ城を賢く攻略してみせた。

 立ち合いの後、左のどわに出たが、やはり押せない。「頭に残っていた」のは、4日目に逸ノ城を下した御嶽海のハズ押しだ。真正面からは諦め、「一番崩れやすい」と見た脇から攻める。「重さ? 感じなかったですね」。好調の小結をねじ伏せ、「気持ちいい!」と声を弾ませた。

 「玉鷲が急に強くなった」と言う人は多い。転機は2016年の名古屋場所。左ひざを負傷したが、バネにした。ひざが伸びたまま圧力を受けるとまた痛める。「だから曲げざるを得ない。本能で覚えた。ひざが曲がり、土俵を円く使えるようになった」と師匠の片男波親方(元関脇玉春日)。上体に頼らない相撲が身につき、15年は年間40勝だったのが16年は47勝、17年には52勝と右肩上がり。三役の常連となった。

 師匠は、「玉鷲には時間がない」とも言う。引退と背中合わせだ、と。何のスポーツも経験したことがないままモンゴルから角界に飛び込んで14年。33歳になった。この日まで1068回、一度も休まず務める土俵で愚直に押し相撲を磨いてきた。玉鷲は、今日も前だけを向いている。

 横綱、大関戦をもう終えて、白星がひとつ先行。勝ち越せば、三役復帰が見えてくる。「やってきたことを信じて。後半から強くなるんで」。細い目で、高らかに笑った。(鈴木健輔)

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