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 40万都市、愛知県豊田市の山あいにある空き家へ移り住む人が増えている。市の空き家情報バンクを利用して移住した人は2017年度、過去最高の34世帯82人になった。都市部に比較的近い「ほどよい田舎」が人気の理由という。

 市中心部から車で約1時間、旭地区の東萩平町。1月に横浜市から移ってきた堀内厳(つよし)さん(49)は、妻(42)、長男(4)とともに築80年超の木造平屋建ての家を借りて暮らしている。「自然環境がいいのか、子どもの体調が良くなりました」

 妻の希望で有機農業をしながら田舎暮らしができる場所を探していた。農産品を売る大消費地、名古屋にも近いうえ将来、親の介護の際は首都圏とも行き来しやすい豊田の場所が決め手になった。「買い物はネットで間に合うし、地元の人たちが助言もくれる。住みやすいです」

 トヨタ自動車系販売店勤務の男性(37)は昨年10月、旭地区の時瀬町にある古民家へ妻子と引っ越した。築91年で宅地面積は約1千平方メートル。カメムシが多いことを除けば、まきストーブを備えた夢の「広い庭がついた古民家」での生活に満足しているという。市中心部の職場まで車で45分はかかるが、「仕事を一から探すような場所は避けたかった。幸い豊田には希望を満たす物件がいくつもあった」。

 豊田市は05年に周辺の旧6町村を吸収合併した後も自動車産業に支えられて人口は増え続けている。だが旭、足助(あすけ)、小原(おばら)、下山(しもやま)、稲武(いなぶ)の山村地域の5地区は過疎化が進み、空き家が増えていった。そこで少しでも定住者を増やそうと空き家情報バンクを10年に立ち上げた。

 5地区(他地区の一部も含む)にある空き家を物件として登録する一方、賃貸、購入を希望する人に情報として提供。トラブル防止のため、希望者は地元住民とも面談する。移住後は住民が相談に乗ってくれるのが売りだ。

 市は補助制度を充実させ、また住民らに空き家を提供するようPRし、物件を充実させてきた=表参照。堀内さんに家を貸した名古屋市昭和区の男性(69)は「空き家は壊すにしてもカネがかかり、草刈りなど管理が大変だった。住む人が現れることは所有者だけでなく、地元住民にとってもいいこと」と話す。

 バンクを利用して移住する人は当初、年10世帯前後だったが徐々に増え、累計で124世帯300人になった。

 分析によると、これまでの移住者のうち県外からは1割と「県内組」が多いのも特徴だ。移住者の相談窓口「おいでん・さんそんセンター」の鈴木辰吉センター長は「全国的にみれば、田舎暮らしの候補地として知名度は低いが、『移住しやすい場所』として知られている」と説明する。豊田市地域支援課の担当者は「物件が多いことに加え、車を走らせれば働く場所も病院もあるという『ほどよい田舎』である点が魅力になっているようだ。今後も地元を中心にアピールしていきたい」と話している。(臼井昭仁)

     ◇

〈豊田市の人口〉 2005年4月に市周辺の旧6町村を合併した当時は40万7682人。今年2月時には42万5059人と増え続けている。だが山村地域の旧5町村だけは、05年の計2万6248人から5002人減った。

移住者向けの補助制度

・賃貸物件向け 空き家の改修費の8割以内(上限100万円)

・用地の取得費の1割以内(上限50万円)

・建物の取得費の1割以内(上限50万円)

※市が指定する山村地域(他地区の一部も含む)のみ。空き家情報バンクの利用が前提など諸条件あり。

空き家情報バンクの登録物件(抜粋)

 地区 家賃(月額、円)  建築時期   宅地面積

・足助 3万5千     1945年   145平方メートル

・小原 1万5千     1955年以前 687平方メートル

・下山 2万       1868年   583平方メートル

・下山 3万       1945年ごろ 688平方メートル

・稲武 売却希望(応相談)1897年   154平方メートル

※2018年3月末現在の登録物件数は22。移住希望の登録者は262。