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 画像を分析して本人確認をする「顔認証」が、生活の場に広がってきた。コンサート会場では、チケットの転売を防ぐ「ダフ屋対策」にも有効だ。さらにその技術は、意外な使い方も生み出している。

 3月上旬、川崎市の総合施設「カルッツかわさき」は、紫色のパーカや帽子を身につけた人たちで、ごった返していた。「ももいろクローバーZ」の高城(たかぎ)れにさんのソロコンサート会場への入場には、「顔認証」を通る必要がある。スキャナーに会員証を示しながらカメラに顔を向けると、数秒で「座席券」が発行された。

 イベント会場での入場管理を担う「テイパーズ」(東京都港区)がNECの顔認証システムを導入したのは2014年のこと。チケットを買い占め高額で転売する不正が横行したことへの対策だ。それまでは免許証の確認などをしていたが人手がいり、1人の入場に15~20秒もかかった。

 現在、「ももクロ」の公演ではほぼ全てで活用。「B’z(ビーズ)」や「ミスターチルドレン」、福山雅治さんの公演でも使っている。

 チケット購入時に顔写真を登録する。入り口のカメラでその写真と照合できた人だけが入れるため「顔認証を実施した公演では転売がほとんど発生していない」(担当者)という。

 娘と訪れた女性(43)は、「スムーズに入れるし、チケットも正規の値段で買いやすくなったのがありがたい」と話す。

 大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、07年から年間パスを持つ人に顔認証システムを導入している。昨年春に導入した新機種では、正面を向かなくてもチェックできるようになり、入場がよりスムーズになった。東京ディズニーランドも19年春から導入を始める予定だ。羽田空港では昨年、日本人が帰国する際の審査に顔認証を導入。国は、ほかの空港にも広げていくという。

 顔認証の技術は、意外な応用もされている。

 例えばリコーは、東日本大震災のとき、津波で流された写真を持ち主に返すために使った。写真を捜している人の顔写真と、洗浄してデジタル化した写真に写る顔が似ているものを見つけ出していった。震災直後の11年4月からの4年間で、9万枚以上の写真が返せたという。

 三井住友フィナンシャルグループは、顔認証だけで食事代を支払う実験を、16年からグループ会社の社員食堂で行った。金融とITを融合させる「フィンテック」の一つだが、現金もカードも持たずに買い物などができる社会が近づいている。

プライバシー保護 求める声

 顔認証の技術は日進月歩だ。パナソニックが今年2月に発表したものは、サングラスをかけていても顔を見分けられる。今年中には、マスクをしていても見破ることができるようになるという。

 テロ容疑者などの不審人物を街中で見つけ出したり、老人介護施設で高齢者の外出を管理したりするのに使えるとみている。

 一方で、顔認証が行き過ぎると、プライバシーが守れないと心配する意見もある。街中のカメラで検知した顔を、SNSなどで登録した写真と結びつければ、その人がどんな人なのかまで一瞬で分かってしまう。

 これに対抗しようとつくられたメガネもある。国立情報学研究所(東京都千代田区)の越前功教授が、福井県鯖江市のメーカーと組んで開発した「プライバシーバイザー」だ。16年に発売した。レンズに付けた角度によって光が反射し、普段は黒い部分が明るく照らされることで、顔だと認識されにくくなるという。

 科学技術の進化に対応したルールづくりに詳しい小林正啓(まさひろ)弁護士は「生体認証は有効な手段だ。ただし、登録されたのが正しい情報でも、それで不利益を被り続ける可能性もある。その点は議論が必要だ」と指摘する。(金本有加)