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 これから新入生歓迎の飲み会シーズン。短時間での多量の飲酒を体験した大学生は、そうでない学生と比べて飲酒時の転倒などけがのリスクが25倍も高い――。筑波大学の調査ではそんな結果が出ている。未成年の飲酒はもちろん禁止だが、「イッキ飲みなど過剰な飲酒は、急性アルコール中毒だけでなくけがをする危険も高くなる」と注意を呼びかけている。

 筑波大学医学医療系・吉本尚准教授(地域総合診療医学)らの研究グループが昨年、発表した。20歳以上の大学生・大学院生計2177人の2013年の健康診断での回答を分析した。

 短時間の多量飲酒のことを「ビンジ飲酒」と呼び、国際的な飲酒量の目安のひとつになっている。今回の調査では、「2時間に男性なら純アルコール50グラム以上、女性なら同40グラム以上を摂取した場合」を「ビンジ飲酒」と定義した。

 過去1年間に、こうしたビンジ飲酒の経験をたずねたところ、1回以上経験していたのは、男性693人(約57%)、女性458人(約48%)だった。

 また、飲酒した関連での骨折や打撲などのけがを過去1年間に経験したのは107人(約5%)で、このうち104人(約97%)がビンジ飲酒を1年間に1回以上経験していた。ビンジ飲酒をしていない学生と比べ、飲酒関連のけがの経験は25・6倍だった。

 吉本さんは「海外の先行研究では3・9~8・9倍なので、日本は非常に高い。日本人のアルコールの代謝能力や体格も影響しているだろう」と話す。

 別の研究では、お店の「飲み放題システム」が飲酒量に与える影響も調べた。大学生ら約560人の回答を分析したところ、飲み放題を利用した場合、しない場合と比べて飲酒量が約1・8倍だった。イッキ飲みだけでなく、時間をかけての大量飲酒も危険だ。吉本さんは「自分がどれだけ飲めるかわからず、お金を気にせず飲んでしまい、けがを起こしやすい。ビンジ飲酒の危険性についての教育のほか、飲み放題システムも考えるべきだ」と指摘している。

「イッキ飲み防止」キャンペーン展開

 アルコール依存や飲酒運転防止などに取り組む市民団体「ASK」(アルコール薬物問題全国市民協会)などでつくる「イッキ飲み防止連絡協議会」は毎年この時期、「イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン」を展開している。26回目となる今回のキャッチコピーは「2時間の飲み会、『死』という結末を迎えないために」だ。

 協議会によると、2013年4月以降に把握できただけでも、9人の大学生が飲酒で命を落としているという。今年のキャッチコピーについて事務局の金田千秋さんは「大学生の飲酒にまつわる事故や事件の多くは、2時間ほどの急激な大量飲酒によって起きている」と指摘する。

 全国の大学に予防対策を促す要望書やポスターを配布するほか、啓発グッズとして、飲酒時のけがの事例のイラストをプリントしたレジャーシートも作製した。問い合わせは同協議会(03・3249・2551、ホームページはhttps://www.ask.or.jp/ikkialhara_campaign.html別ウインドウで開きます)。(浅野真)

大学生の飲酒によるけがの事例

◇居酒屋で飲酒時にトイレで転倒し、頭を強打。救急車で搬送

◇サークルの合宿で酒を飲み過ぎ、過って部屋の窓から転落。背中の打撲で1日入院

◇打ち上げ後、急性アルコール中毒を起こして気を失った。友人が運んでくれていた時に体を落とされて頭を打つ

◇カラオケボックスで遊び終え、酔いつぶれた友人を担ぎ上げようとした時、右肩をひねって脱臼

◇友人宅でお酒を飲んでいる時、3階から転落して頭を骨折

◇キャンプ中に飲酒し、がけから転落してけが

◇駅前で酔った友人が走り回っていた時、それを静止するために友人のフードをつかまえたところ、その手を振り払おうとした友人の手が鼻にあたり、鼻骨を骨折

(※「イッキ飲み防止連絡協議会」による)

     ◇

 〈ビンジ飲酒〉 ビンジ(binge)とは英語で「飲み過ぎ」の意味。今回の研究では「2時間に男性なら純アルコール50グラム以上、女性なら同40グラム以上を摂取した場合」と定義した。50グラムの目安は、ビール(度数5%)なら500ミリリットル缶2・5本、日本酒(15%)は2・5合、ウイスキー(43%)ならダブル(60ミリリットル)2・5杯、チューハイ(7%)は350ミリリットル缶2・5本など。アルコールの基準量は、各国により微妙に異なる。