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患者を生きる・新型出生前診断(記者の一言)

 出生前診断の取材では、「安易な気持ちで検査を受けるべきでない」という意見をよく耳にします。ネットには「安心料と思って検査を受けた」といった体験談もあり、手軽な検査ととらえている人は実際多いようです。

 ただ私には、それはある一面でしかないように思えます。検査を受けようとする女性たちに会うと、「それが正しいから受ける」という責任感のようなものを彼女たちに感じるからです。

拡大する写真・図版取材した夫婦の1歳6カ月になった長女は絵本を読むのが大好きだ=今年2月、東京都内

 

 ダウン症などのリスクが高くなる高齢妊娠では、高い自己負担額を支払ってでも、赤ちゃんへの危険が低く、かつ精度の高い新型出生前診断を受けるべきだ――。彼女たちに、こんな風に思い込ませてしまう何かがあるのではないでしょうか。

 まじめな人ほど、周囲の期待に応えようとがんばります。直接だれかに言われたわけではなくても、身の回りにあふれる情報を読み取って、母とは、妻とは、働く女性とは「こうあるべきだ」というイメージをふくらませます。

 もし女性たちが社会が求める「理想の母(妻)」を体現していくステップの一つとして、高い責任感を持って我が子のことを知ろうとしたり、生まれてくる子にも「理想の子ども」であってほしいと望んだりしてしまっているのであれば、それを「安易だ」と責めてもおそらく議論はかみ合わないでしょう。かえって追い詰めたり、混乱させたりする心配もあります。

 

拡大する写真・図版カウンセリングを担当した医師の浜之上はるかさん。分厚い資料をもとに説明する=今年3月、横浜市

 横浜市大付属病院の浜之上はるか講師によると、妊婦さんの中には、出生前診断に対する社会の批判的なイメージに悩み、検査の相談を周りにできない人や、内密に検査を受けて結果が出るまで周囲に妊娠を伝えない人もいるそうです。

 女性たちは本当に「理想の母」を目指すべきなのでしょうか。それが思い込みだとしたら、いったい何が女性たちをそう思い込ませているのでしょうか。ここを掘り下げることで、出生前診断の議論に、また違った光をあてられるかもしれません。

 現在、フォーラム面の企画で、新型出生前診断(NIPT)についてのご意見を募集中です。様々な切り口で議論ができたらと思います。ぜひ、みなさんの声もお聞かせください。

▽新型出生前診断を考える 専門家の見方は

 https://www.asahi.com/articles/ASL3M0NVFL3LUBQU00S.html

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・妊娠・出産>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(冨岡史穂)