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 今季限りでの引退を表明していたトヨタ自動車の大神雄子が、25日のWリーグ3位で有終の美を飾った。米女子プロリーグ・WNBAで史上2人目の日本人選手になるなど、女子バスケットボール界の先駆者だった。

 25日のプレーオフ3位決定戦では、シャンソン化粧品を最終盤の劇的な逆転で下し、チームメートに胴上げされた。最後の試合だったが「どこまでできるか、と楽しみにしている自分もいた。しっかりドライブできていた。35歳という年齢で辞めたとは書かないで下さい」と笑いを誘った。

 愛知・桜花学園高では全国選抜優勝大会で3度優勝。ジャパンエナジー(現JX―ENEOS)に入り、170センチと小柄ながらマークの間を抜くスピードと広い視野を武器に日本代表で長くエースガードとして活躍。米国のほか中国でもプレーした。

 女子バスケ界のパイオニアといわれる理由はそれだけではない。最近は女子のトップレベルでも多くみられるようになった「ワンハンドシュート」は大神がはしりだ。

 利き腕の力で球を押し出し、片方の手は方向を定めるために添えるだけ。女子は幼い頃から、非力という前提で両手でのシュートが一般的だった。その場合はゴール方向へ正面を向き直すため、シュート態勢に入るまで時間がかかる。ワンハンドなら多少体勢が崩れていても打てて、得点機が広がる。

 育った環境が大きかった。小学2年時、山形大女子バスケ部で長く監督を務めた父・訓章さんが米カリフォルニア州にコーチ留学。大神も一緒に渡米した。現地では女子もワンハンドが当たり前だ。小学6年時にはソフトボール投げで50メートル以上を投げて山形県記録を作ったほどの強肩にも恵まれ、すぐ習得した。

 現地では男子プロのNBAを生で観戦する機会もあり、その映像を繰り返し見た。ドリブルで股の間を通す「レッグスルー」や空中でシュートフェイントを入れる「ダブルクラッチ」も、練習で物まねして自分なりにアレンジ。自由なプレーはそうやって育まれた。

 存在の大きさは技術面だけではない。3位決定戦で対戦したシャンソン化粧品の日本代表、本川紗奈生(25)は大神のバスケ界全体を考えた行動に感銘を受けた。「(リーグや日本協会に)選手たちの意見をことあるごとに伝えてくれたという意味で画期的だった。これからは私たちがそういう存在にならないと」と語る。

 大神も今後の具体的なことは未定としながらも「バスケ界が選手ファーストになるために協力していきたい」と語る。そして「今後に生かすためのバスケ人生だったと思う。人としても先駆者でありたい」とセカンドキャリアに思いをはせていた。(有田憲一)