[PR]

患者を生きる・透析しながら(記者の一言)

 仕事と子育ての両立は、それだけでも大変なことです。それなのに今回、連載で取材した女性(38)は、仕事と子育てに加え、通常でも1回4時間の透析を週3回も受けています。

 「透析と子育て、仕事をすべてをこなすのは並大抵なことではないのに、彼女はいつも淡々とこなしています。同じ働く母親として、私の方がパワーをたくさんもらいました」。女性がふだん透析を受けている、つばさクリニック(東京都墨田区)の大山恵子院長(59)はこう振り返りました。大山さん自身も3児の母。女性が第2子の妊娠時には妊娠26週目まで透析を担当しました。

 私も取材してまったく同じ感想をもちました。

 

 腎臓の専門医によれば、母体や胎児への肉体的な影響を考えた場合、透析をしながらの妊娠、出産はあまり好ましくないそうです。可能なら、妊娠を希望する若い腎不全の患者さんは、腎臓移植を受けた方が望ましいそうです。ただ、女性のように、拒絶反応で、移植した腎臓が働かなくなってしまう場合もありますし、移植する腎臓が見つからない場合もあるでしょう。

 

 透析を受けている人が妊娠出産する例は国内ではほとんどありませんが、海外での研究から少しずつ実態がわかってきました。妊娠中にどのような点に注意して透析を受け、妊娠生活を送れば、母体や胎児へのリスクを減らすことができるのも少しずつわかってきました。

 世界中の透析患者の妊娠についての論文をまとめたイタリアのトリノ大学などの研究チームによると、2000年~08年に論文で報告された透析患者の妊娠は90例だったのが、00年~14年には600例以上に増えたそうです。

 研究チームは、「移植する腎臓の不足に加え、透析技術の進展で胎児へのリスクが減らせるようになってきている結果、透析しながらの妊娠への関心が高まってきている」とみています。そして、「透析患者の妊娠・出産は、従来は例外的な出来事だった。最近は、まれではあるが不可能ではない出来事になりつつある」と結論づけています。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・妊娠・出産>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(大岩ゆり)