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 言葉による嫌がらせや不透明な選手選考――。レスリング女子で五輪4連覇を達成した伊調馨(ALSOK)らに対する日本協会・栄和人強化本部長のパワハラ行為が6日、同協会の第三者委員による聞き取り調査で認定された。当初は栄氏をかばい、関係者による告発を全面否定していた協会も主張を覆さざるを得ない事態となった。

 問題発覚から1カ月超。ここまでの協会は、こちらが首をかしげてしまう対応が多かった。告発に対し、「(伊調のコーチに)不当な圧力をかけた事実はない」などと即座に反論。第三者委員の弁護士による聞き取りが始まる前に「パワハラはなかった」と言い切って、「公平中立な調査ができるのか」と告発した側の疑念を強めた。

 栄氏が監督を務める至学館大の谷岡郁子学長(協会副会長)が「伊調さんは選手なんですか?」などと発言した記者会見も世間の反感を買った。スポーツ団体の不祥事が発覚するたびにあらわになる、事後対応のまずさやガバナンスの欠如がまた露呈した。

 2004年アテネ五輪で女子レスリングが正式競技となって以降、日本は伊調と吉田沙保里を筆頭に金メダルを量産してきた。協会は、女子指導の中心を担ってきた栄氏の手腕を買い、15年に男女ともに統括する強化本部長に就かせた。選手選考などの権力が栄氏に集中したことが今回の問題の一因でもあった。任命責任を問われた福田富昭会長は「成果が出ていたので……」と栄氏への監督が甘くなったことを認めた。

 今回の問題は栄氏個人の責任であると同時に、特定の人物が権力を握り続ける組織の弊害でもある。13年に起きた柔道界の暴力問題でも、任期の長い強化責任者のおごりを連盟役員が正せなかった。権力の集中が招くひずみ。スポーツ界で同じ過ちが繰り返されている。(野村周平)