拡大する写真・図版 憲法改正の発議までの流れ

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教えて!憲法 国民投票:2

 国会が憲法改正案を提案し、国民投票をもとめることを「発議」という。憲法96条は「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と改正手続きの原則をさだめているが、発議までにはいくつもの段階がある。

 第1段階は、改正原案の国会への提出だ。原案は、国民への「問い」となる改憲案のたたき台。この3月に自民党が4項目の改憲案をとりまとめたのは、第1段階に進もうとするとりくみだ。原案の提出には、議員が一定数の賛成者をえておこなう方法と、衆院と参院にある憲法審査会が与野党の合意を前提におこなう方法の2通りがある。内閣は提出できない。

 改正する箇所が複数ある場合、原案は「関連する事項ごと」に区分することになっている。たとえば、平和主義をさだめた9条の改正と環境権の創設という、別個のことがらをまとめて一つの問いにすることはできない。ただ、どこまでを「関連する事項」とみるかは提案者や国会の判断にゆだねられている。

 原案は法案と同じように衆参両院で審議する。憲法審査会では過半数の賛成で可決されるが、その後の本会議では、欠席議員をふくむ総議員の3分の2以上の賛成が必要になる。原案はこの手続きをへて、国民投票にかける改憲案になる。国会は発議にあわせ、発議後60日から180日の間で投票日も議決する。

 一度の国民投票で、いくつの改憲案を発議できるか法律にきまりはない。過去の国会審議では、数が多いと国民が理解しにくくなることや、投票所に置ける投票箱の数を理由に「3問から4問、ぎりぎり5問が限界」とされた。投票日は憲法上、国政選挙の投票日と同じ日にできるが、「有権者が混乱するおそれがあり好ましくない」とされた。

 国民投票は国民主権を具体化する手続きだが、限界もある。国会が発議した改憲案への賛否しかしめせないことだ。

 たとえば、9条なら、①自衛隊を明記するかどうか②集団的自衛権の行使を認めるかどうか――といった複数の論点がある。自衛隊をしるした条文への賛否を問うだけでは、②の是非について判断をしめせない。国民投票法の付則では、改憲の対象となりうる問題について、あらかじめ国民の意思を問う「予備的国民投票」の必要性を検討する、とされている。これをつかえば①②をそれぞれ問えるが、検討は進んでいない。

 国会が、いくつもの論点をむりやりひとまとめにしていたり、抽象的でわかりにくかったりする改憲案を発議した場合、裁判所や選挙管理委員会のような第三者機関が勧告、是正できるしくみを備える国もある。

 日本にはこうしたしくみがない。日本の制度では、改憲を発議する国会の責任がとりわけ重い。(石松恒)

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〈予備的国民投票〉憲法改正を必要とする問題や対象となりうる問題について、あらかじめ国民の意思を問う国民投票。国民がどんな憲法改正をのぞんでいるのか、いないのかを、改憲案の条文への賛否とはちがう聞き方で探ることができる。その結果は参考にとどまり、法的拘束力はない。

 2007年に国民投票法をつくるさい、国民投票の対象を憲法改正にしぼるのか、国政の重要課題に関する「一般的国民投票」に広げるのかが争点のひとつとなった。結局、国民投票法では憲法改正のみを対象とした。一方で、国政の重要課題全般ではなく、改憲とかかわる問題についての予備的国民投票を検討することが、同法の付則にしるされた。

〈内容関連事項〉憲法改正原案を発議するさい、「内容において関連する事項」ごとに区分するようもとめる国会法の規定。複数の論点をまとめて国民投票にかけた場合、これには賛成、あれには反対といった人がでてくるため、国民の意思を反映することがむずかしくなる。

 一方で、たとえば統治機構をあらためるようなとき、ひとつの条項の改正ではすまず、まとめて問わなければ矛盾がうまれかねないケースも想定される。このため、内容関連事項ごとに区分するというルールになった。

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