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 加藤勝信厚生労働相は10日の閣議後会見で、裁量労働制を違法適用したとして東京労働局が特別指導した野村不動産の社員が、特別指導の前に過労死し、労災認定を受けたことを初めて認めた。加藤氏は今国会で、裁量労働制の乱用を取り締まった例として同社への特別指導をあげて答弁していたが、過労死の事実はこれまで認めていなかった。

 加藤氏は「ご遺族のご意向」と「個人情報保護法」に基づいて「申し上げることができること」として、野村不動産の社員が過労死し、新宿労働基準監督署が昨年12月26日に労災認定したことを認めた。労災認定した日は、東京労働局が同社への特別指導を公表した日と同じだった。

 厚労省は個人情報に関わることなどを理由に、過労死の事実を認めてこなかった。一方で、遺族や代理人が公表するなら認めると説明していた。そんな中、遺族からのファクスが5日に東京労働局と新宿労働基準監督署に届いた。野党は「遺族が過労死の公表に同意する趣旨で送ったものではないか」と追及。厚労省は9日、ファクスを送ったのが遺族だったと確認できたとしたが、過労死の事実については「(国会での答弁を)詰めたい」などとしていた。

 野村不動産の特別指導をめぐっては、加藤氏が2月、裁量労働制の乱用を取り締まった例として国会で取り上げていた。しかし、3月に特別指導のきっかけが男性社員の過労自殺だったことが朝日新聞の報道で発覚。野党は「政府が特別指導だけを公表し、都合の悪い過労自殺は隠していたのではないか」とし、加藤氏の国会答弁は「過労死の事実を知りながら答弁したのなら、政治的責任は免れない」と追及している。

 今回、厚労省が過労死の事実を認めたことで、加藤氏が過労死の事実を知った時期についての厚労省の説明が今後の焦点になる。

 加藤氏はこの日の会見で「どういう経緯でどういう判断がなされたかは、これからの監督指導に影響があるということで、これまでも不開示としてきた。そこについての状況には変更がない」と述べ、自身が過労死を知った時期は明らかにしない考えを示した。野党は10日の参院厚労委員会で加藤氏を追及する構えだ。