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 全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ、第15回本屋大賞が10日発表され、辻村深月さん(38)の長編小説「かがみの孤城」(ポプラ社)が受賞した。大賞以上に注目を集めたのは翻訳小説部門。2012年に始まり、今回は米国のファンタジー、ステファニー・ガーバー著「カラヴァル 深紅色の少女」が選ばれた。この本、日本ではまだ約900冊しか売れていないのだ。

 冒険と恋に翻弄(ほんろう)される少女を描くファンタジー。東京都内で同日夜に開かれた発表会で、訳者の西本かおるさんは「喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。受賞をきっかけに10代の女の子に読んでほしい」と話した。原著は米国で昨年1月に発表され、30カ国以上で翻訳が決定した。日本語版は昨年8月に発売されたが、初刷は3500部。昨年同部門で受賞したトーン・テレヘン著、長山さき訳「ハリネズミの願い」(新潮社)が受賞前に6万3千部出ていたことと比べると、格段に少ない。

 実売では900冊だが、出版社キノブックスの宣伝室室長は「わずか10人の編集部で宣伝費も多くかけられない。本当に売れてないんです」。受賞を受けて3万部の増刷を決め、攻勢を強める。

 近年の本屋大賞の選考には、疑問の声があがることもあった。昨年は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)が直木賞とのダブル受賞に。「『売り場からベストセラーをつくる』という趣旨から外れた」との声もあった。本屋大賞実行委員会理事の高橋美里さんは「読者に届けたい本が直木賞とかぶってしまうこともなくはないが、今回の翻訳小説部門の受賞は『良い作品をかぎ分ける』というこの賞本来のあるべき姿を改めて示してくれたのかも」と語った。

 本屋大賞を受賞した辻村さんの作品の主人公は、学校で居場所をなくして自室に閉じこもる中学1年の女の子。ある日突然、鏡の中の不思議な城に誘いこまれ、それぞれに心に傷を負った中学生6人と出会い、心を通わせていく青春ミステリーだ。

 辻村さんは山梨県笛吹市生まれ。2004年、「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受けてデビュー。11年に「ツナグ」で吉川英治文学新人賞を受賞、12年には「鍵のない夢を見る」で直木賞を受けた。とりわけ青春小説の分野で、10代を中心に読者の心をつかんできた。

 辻村さんは発表会で「子どもに限らず、大人も居場所がないと思っている人に読んでほしい」と話した。

 本屋大賞は2016年12月~17年11月に出た日本の小説が対象。全国504書店の店員665人が1次投票で10作に絞り、2次投票で大賞を決めた。(宮田裕介)