[PR]

 現在、児童ポルノだけに限定されているインターネット接続事業者(プロバイダー)によるサイトへの接続遮断について、政府は近く漫画などの海賊版サイトに対象を拡大する意向だ。海賊版サイトによる著作権侵害の急増を受けた対応。ただ、遮断にはネット利用者の通信をチェックする必要があり、専門家からは「通信の秘密」や「検閲の禁止」を規定する憲法に抵触する恐れがあるとの指摘がある。

 サイトブロッキングと呼ばれる接続遮断は、プロバイダーや検索事業者らによる社団法人が警察情報などから作成したリストを元に、児童ポルノについてのみ「緊急避難措置」として実施されてきた。プロバイダーの判断で遮断され法的な根拠はない。利用者はサイトにつながらなくなる。

 だが、海賊版問題を検討する政府の知的財産戦略本部は昨年5月にまとめた計画で接続遮断に「引き続き検討を行う」と言及。菅義偉官房長官が3月19日の記者会見で、「サイトブロッキングを含めてあらゆる方策の可能性を検討している」と発言した。内閣府が検討を進めている。

 議論の背景には、昨年秋ごろから、発売直後の漫画雑誌の内容が無料で読める海賊版違法サイトへのアクセスが急増していることがある。社団法人・コンテンツ海外流通促進機構によると、この海賊版サイトへの訪問者数は昨年9月から半年間で延べ約6億2千万人。被害額は推計で約3200億円に達するとしている。

 接続遮断の拡大についてプロバイダーは「憲法21条に定められた通信の秘密の侵害につながる」と反発。人格権の侵害にあたる児童ポルノは特例で、財産権を脅かす海賊版に対象範囲を拡大するのは認められないとの立場だ。

 宍戸常寿・東大教授(憲法)は「『緊急避難』を理由に、政府の要請でさらに対象範囲を拡大して遮断を求められる事態が起きかねない。著作権侵害サイトはたしかに問題だが、接続遮断は立法で対応すべきだ」と話す。(川本裕司、岩田智博)