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おさすり(税別329円)

 「30年前、京都へ修業に出て初めて“柏餅(かしわもち)”を見ました」とは、5月いっぱい「おさすり」づくりに忙しい三重県尾鷲市の和菓子店・朝日饅頭(まんじゅう)本舗の3代目、村田晋さん(56)の衝撃の体験談。端午の節句は柏餅ではなく「おさすり」が常識の尾鷲で、柏餅の存在を知らずに成長しても不思議ではありません。

 米粉の餅に小豆の餡(あん)を入れて葉で包み蒸すのは柏餅とまったく同じ。違うのは、柏の葉ではなくサルトリイバラの葉で包むこと。里山に自生するトゲをもつ蔓(つる)性の植物の葉で、丸くて表面がつるつるしているため、餅を包むのに最適です。葉脈を生かし、1枚の葉を真ん中で折るように餡入り餅を包んだのが「おさすり」。名前について「ちまきは男の子、おさすりは女の子を表す」という言い伝えもありますが、由来はよくわかっていません。

 少数派に見えるサルトリイバラ派、かつてはこちらが節句餅だったという研究報告があります。17世紀の江戸で柏派が生まれるも昭和初期まで少数派で、サルトリイバラ派が優勢でした。じつは、こちらが原種で本来の姿。ならば「おさすり」は食のシーラカンスと言えそうです。

採取地

主婦の店セントラルマーケット

(三重・尾鷲)

0597・25・1225

デジタル余話

 30年前の京都に戻って、この話を修業中の村田さんに教えてあげたい衝動に駆られています。ご当地食の生まれる背景に、その地域の歴史と風土が深く関係していますが、育つ植物の違いもかなり重要だと再認識。資料となったのは、兵庫県立人と自然の博物館の自然・環境再生研究部による「かしわもちとちまきを包む植物に関する植生学的研究」という論文です。人のことを言えないけれど、世の中には色々な研究があるもんですねぇ。

     ◇

 菅原佳己(すがわらよしみ) スーパーマーケット研究家。著書に「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」など。

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