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 2歳前後の子どもが、何をするのにも嫌がる「イヤイヤ期」――。大人が手を焼く行動も、子どもにとっては自我が芽生え、それを表現できる大切な成長過程です。本紙の「声」欄(東京本社版など)に寄せられた「前向きに捉えられる新しい呼び方を考えませんか?」との投稿を機に考えます。

「声」欄への投稿(要旨)

カウンセラー、永瀬春美さん 

 認知症当事者の思いに添って「徘徊(はいかい)」という言葉を見直す動きがあることを知り、子どもの「イヤイヤ期」も同じ構図だと気づきました。

 2歳前後に始まるイヤイヤは、「自分で決めて自分でしたい」という素晴らしい成長の姿なのに、大人には「反抗」に見え、「言うことを聞くようにしつけなければならない」という誤解があるように思います。

 「イヤイヤ期」という大人サイドの呼び方、変えませんか。

「大人が考え方変えれば…」

 公園から帰ろうと言うと「イヤ!」。ご飯を食べようと誘っても「イヤ!」。着替えも「イヤ!」。自分の要求が通らないと大泣きしたり、道の真ん中で寝転がったり。親は周囲の目も気になり、やめさせようとして強引に従わせたり、怒ったり……。永瀬さんはこんな親の話を聞くたび、「子どもの立派な成長なのに」と胸を痛めていた。

 そんなとき、朝日新聞の「認知症とともに 徘徊と呼ばないで」(3月25日付朝刊)の記事に目がとまった。「徘徊」は、認知症の当事者にとっては「目的を持った外出」という指摘だ。

 「記事を見たときにはっとしました。大人が考え方を変えれば、悩みが軽くなることもあると思ったんです」

欲求や意思を自覚

 この時期の子どもが頻繁に「イヤ」と言うのはなぜなのか。

 遠藤利彦・東大教授(発達心理学)は「自分探し」と指摘する。1歳半~2歳は、歩行や手づかみが可能になり、世界が一気に広がる。だが、初体験が多すぎて「わからない」と「本当にイヤ」が区別できないため、何でも反応が「イヤ」になりがちだという。でも、感情を大人にぶつけるやりとりを通じ、子どもは自分の欲求や意思を自覚し、周囲に伝えられるようになる。

 これは、他人の願望に合わせる「偽りの自分」ではなく、自分の内側の欲求に従う「本当の自分」を発達させる過程なのだという。「将来、打たれ強くなるための大事なトレーニングです」

 ただ、イヤイヤ期がない子どももいる。年齢も1歳や3歳のこともあり、激しさも個人差があるという。

思い 言葉にさせて

 親はこの時期、どう向き合えばいいのだろう。40年以上の保育士経験を生かし、子育てに関する講演や執筆活動をする井桁容子さんは、「まずは子ども自身に理由を聞くことが大事」と話す。

 例えば、「ご飯を食べるのがイヤ」と言い出したら――。頭ごなしに「食べなさい」と言うと、子どもは親から気持ちをすぐに否定されたと受け取り、反発する可能性が大きい。一方、「どうして食べたくないの?」と聞くと「おなかがすいてないよ」「遊んだあとでね」など、自分の気持ちや意思を表現できる。「食べる」という結論は同じでも、思いに寄り添ってもらえた満足感が積み重なれば、徐々に「今回は食べてみようかな」という気持ちになることも多い。

 事前に予告することも効果的だ。井桁さんによると、遊びをやめる時間も、あらかじめ「時計の針がここに来るまでね」など具体的かつ短い言葉で伝えるとよいという。

 だが、実際に家の外で子どもがかんしゃくを起こしたり、親に心の余裕がなかったりすると、こうした対応が難しい時もある。井桁さんは「すぐに『良い子』になってくれる『成果』を求めない。周りの大人も温かく見守って」と呼びかける。(中井なつみ、田渕紫織)

言い換え、募集します

 「イヤイヤ期」を言い換えてみませんか? 新しい呼び名を募集します。名前を考えた理由や体験もお寄せください。電話番号を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.comメールする)やファクス(03・5540・7354)、郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「子育て」係へ。